◆第167回
天皇賞(春)・G1(4月30日、京都競馬場・芝3200メートル)
第167回
天皇賞・春・G1(30日、京都)で
タイトルホルダーが偉業に挑む。連覇となれば6頭目だが、異なるコースでの達成は史上初。前哨戦の
日経賞を圧勝し、鮮やかな復活を遂げた昨年の勝ち馬は
リニューアル後初のG1でも強さを示すのか。本紙評論家の小島太元調教師は「競馬
ジャーナル」で問題なしと太鼓判を押した。
偉業への道は衝撃的な圧勝から始まった。
タイトルホルダーの
日経賞は不良馬場を難なく克服し、2着に8馬身差。直線で後続を突き放す姿は鬼気迫る覇気を放ち、衰えを危惧する外野の声を一蹴した。横山和は「有馬の時はゲートを出てからいつもの加速の仕方ではなかったけど、前走は出脚から『らしさ』が戻った」と頬を緩ませる。
逆境を乗り越えた。昨秋は
凱旋門賞で11着に敗れた後、年末の
有馬記念でも9着と力なく馬群へ沈んでいった。G1・3勝馬とは思えない明らかに精彩を欠いた走りを、「あそこで終わってしまう馬もいる」と栗田調教師は振り返る。だからこそ、
日経賞の圧勝は大きな意味を持っていた。
超えなくてはならない“壁”もある。今回は約2年半改修工事をしていた京都競馬場に初めて足を踏み入れる。直線に急坂のある阪神、中山を得意とする同馬だけに、直線が平坦になる京都への適性は未知数だ。横山和も「走ってみなきゃ分からない。タイトル自身が一番知りたいと思っているんじゃない?」と冷静に口にする。
しかし、相棒への信頼は深まっている。19日の1週前追い切りでは抜群の動きを見せ、「昨春は
日経賞を使うかどうかも分からない状態だったけど、今回は順調にきていると思う」と納得の様子。7馬身差の独走Vとなった昨年からの“上積み”を感じ取り、勝利への青写真を思い描く。
過去にこのレースを連覇した馬は5頭いるが、すべて京都だけで決めたもの。異なるコースでの達成は今までにない。「今回はみんな同じ条件。それを乗り越えた馬が天皇賞を勝てる。乗り越えてほしい」と力を込める横山和の瞳には確かな闘志の炎が燃えている。真の王者となるために史上初の“タイトル”を奪い取り、競馬史に名を刻み込む。(角田 晨)
【小島太元調教師「舞台が阪神から京都に替わってもパフォーマンスが落ちることはないだろう」】
ちょうど1年前、調教師のご厚意で、美浦トレセンの栗田厩舎で
タイトルホルダーを目の前で見せてもらった。
見た目が派手な馬ではなかったが、サイズは中型でちょうど良く、馬体もコンパクトにまとまっていた。さらに、関節もすごく柔らかく見えたので、私はスタミナ型というよりスピードタイプの印象を受けた。思わず近くにいた担当助手に『この馬、3000メートル(
菊花賞)を勝ったんだよな?』と聞いたほどだ。
昨年の
有馬記念は
凱旋門賞で非常に重い馬場を走った影響が少なからずあったはずで、前走の
日経賞が本来の力。1年前はまだ緩さがあって頼りない面もあったが、着実に進化している。この馬の武器であるスピードと持久力を考えれば、舞台が阪神から京都に替わってもパフォーマンスが落ちることはないだろう。(スポーツ報知評論家)
<小島太>(こじま・ふとし)1947年4月11日、北海道生まれ。76歳。66年から96年までトップジョッキーとして活躍し、
JRA通算1024勝。ホースマンの夢であるダービーを2度制した(78年
サクラショウリ、88年
サクラチヨノオー)。騎手引退後は97年に厩舎を開業し、通算476勝をマーク。
イーグルカフェ(00年
NHKマイルC、02年
ジャパンCダート)、
マンハッタンカフェ(01年
菊花賞、
有馬記念、02年
天皇賞・春)によるG1・5勝を含む通算476勝。
イーグルカフェで
ジャパンCダートを勝った世界的名手のデットーリ騎手から「日本のお父さん」と呼ばれている。趣味は大相撲観戦。本紙ではコラム「競馬
ジャーナル」を随時掲載している。
スポーツ報知