桜花賞では中団からしぶとく追い上げ、5着に食い込んだ
ドゥアイズ。スパッと切れるというよりは、ジワジワと脚を使う同馬にとって、1600メートルの瞬発力勝負がベスト条件ではないのは陣営も認めるところ。だからこそ、2400メートルに距離が延びる
オークス(21日=東京芝2400メートル)では逆転の戴冠を期待せずにはいられない。
「
桜花賞の前に戻ってきた時も“あ〜成長したな”と思いましたが、この中間はさらに成長が進んだ感じがします」
ドゥアイズについて興味深い話を聞かせてくれたのは攻め専の笠原助手。順を追って改めて説明させていただこう。まず
桜花賞以前は後ろの力が強い半面、前が小さく見えるなど、体形的に良化途上は否めない面があったのだとか。
「その影響で
バランスの取りにくいところもあったんですが、首や肩回りが大きくなってきたことで、今まで取れなかった
バランスが取れるようになった。それまでは伸び縮みできる範囲の優しい姿勢でずっと乗っていましたが、伸び縮みしながら無理なく重心を後ろに持ってこれるようになってきたんですよ。それが
桜花賞のころですかね」
前後のパーツの大きさが整ってきたことでフォームの成熟度もアップ。それに伴い、フットワークにも弾む感じが増してきたという。これが第一段階。そして、この中間はまた馬体に別ベクトルの成長が見られるとか。
「ほんのちょっとしか放牧に出ていなかったんですが、帰ってきたら前後(胴)が伸びて、より
バランスの取りやすい体形に近づきました。乗っていて距離はあったほうがいいと思い続けてきたんですけど、外から見ている人も“これなら確かに距離が延びたほうがいいな”と言ってくれるようになりましたね」
詰まり気味だった
シルエットが、より中距離向きにシフトしたのが第二段階。まるでレースへ照準を合わせるようにこの春、段階的に成長を見せているというのだから本番が楽しみで仕方ない。
もちろん、ここまで順調にキャリアを積んでこられたのは陣営の努力のたまものだ。血統的な舞台裏を明かせば、半姉
エイボンクリフがそうだったように、気がグッと入りやすい、そんな気性の難しさを内包しているのが
ドゥアイズ。ゆえにデビュー前からフラットワークなど馬術的なトレーニングも取り入れ、丁寧に丁寧に調整を重ねてきた。
「どこかで小さな兆候を見せたりするので、それを見張って見張って、そういう方向にいかないように。頭はカッとなっても体は
リラックスできるように。ちょっとずつ、ちょっとずつをひたすらやってきました」
王道に近道なし。ただ一歩一歩、着実に素質に磨きをかけてきたのだ。
馬は
オークスに向かってまさに充実一途。積み上げてきた地道な努力が、樫の舞台で大きな花を咲かせることを願わずにはいられない。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ