日本ダービー(28日=東京芝2400メートル)が近づいてくると、トレセン全体の空気がピリッと引き締まる。それはレースが持つ独特の熱気や緊張感が自然と周囲に伝播していくからなのだろう。
「もちろん、クラシックはすべて特別だけど、その中でも
日本ダービーは重みが違う」
そう話すのは管理馬
ベラジオオペラを大一番に送り出す上村調教師だ。自身もジョッキーとして
日本ダービーに4度出走。その中でも思い出に残っているのは「
サイレンススズカ(1997年9着)と
ゴールドアリュール(2002年5着)の両年」と振り返る。特に
ゴールドアリュールとのコンビで臨んだ年(勝ち馬
タニノギムレット)は上位5頭がわずか0秒3差にひしめく大混戦。「あと300メートルまでは勝てるかと思ったが…」と悔しさをにじませつつ、頂上決戦の厳しさを伝えてくれた。
そして今年は調教師として初のダービー参戦。「管理馬を送り出せるのは本当に名誉なこと。自分にとって今年は特別なダービーです」と話し、夢舞台での活躍を誓う。
トライアルの
スプリングSを制して勇躍、臨んだ
皐月賞は勝ち馬から1秒8差の10着。初のGIはほろ苦い結果に終わったが、「ただ出すだけの馬ではない」と指揮官は
ファイティングポーズを崩さない。
「前回はスタートが良かった分、前々でハイペースに巻き込まれて…。競馬がかみ合わなかった」
前半1000メートル通過58秒5は過去10年で2番目に速い流れ。しかも重馬場でのものなのだから、前の馬には厳しい展開だったのは明白。ゆえに「この馬の力を測るうえで物差しになるレースではなかった」との言葉も十分にうなずけるものだ。
その前走を除けば、3戦3勝という無傷の戦績だけが残る。馬体にまだ緩さが残っており、「本格化するのは古馬になってから」という現状でこれだけ走れているのだからポテンシャルの高さは推して知るべしだろう。
「距離はやってみないと分からないところはあるけど、操縦性の高さとレースセンスの良さがこの馬の武器。ひっかかったりするようなタイプではないからね」
ジョッキーとしての経験も踏まえて上村調教師がダービー攻略のポイントに挙げるのは「いかにうまく立ち回れるか」。それを実行できるだけの可能性を
ベラジオオペラの走りに見いだしている。全ホースマンが目指す夢舞台、
日本ダービー。
ベラジオオペラを送り出す上村調教師にとって、悔いなき一戦になることを願ってやまない。
(西谷哲生)
東京スポーツ