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“災害級の暑さ”は競走馬にも大敵 JRAが進める熱中症対策とは?

  • 2023年08月31日(木) 12時15分
 今夏は日本各地で最高気温35度を超える猛暑日が続き、東京における年間猛暑日日数は過去最多を記録。その影響は競馬界にも及び、今月には昨年の菊花賞アスクビクターモアが放牧先で熱中症による多臓器不全を発症して死亡し、多くのファンに衝撃を与えた。“災害級の暑さ”とも報道される昨今。来夏には一日でもっとも暑くなる時間帯のレースを休止するなど、さらなる対策が講じられる予定だが、改めて競走馬への暑さ対策についてJRAに聞いた。

 猛暑日と聞くと、真っ先に注意しなくてはいけないのが熱中症。熱中症とは高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をいい、めまいや頭痛、倦怠感などの症状が出る。

 JRA広報によると、競走馬においてもおおむね人と同様の症状が出現。レースや激しい運動後にふらふらしたり、筋肉の痛みやけいれんから後ろ脚を繰り返し蹴る動作をしたり、また呼吸が落ち着かないといった症状が出る。さらに重篤な状態となると意識障害を起こして動けなくなることが稀にあるが、他に原因があることもあり、慎重な診断が必要という。

 熱中症になった際の回復方法としては、馬体の冷却が最優先。日陰などの涼しい場所で馬体に水をかけ続け、併せて水を飲ませ塩分補給も同時に行う。さらに症状が重い場合は、塩分などを迅速に体内へ補給するため輸液療法が必要となることもある。

 近年は北海道でも30度を超える日があるため、JRAでは対策として装鞍所における日よけ拡大やミストの噴霧でレース前に馬体の体温上昇を防止。レース後には迅速な馬体冷却のため各所にシャワーを設置している。さらに競走馬診療所には、厩舎関係者が速やかに塩分を与えられるよう、電解質サプリメントも用意している。

 競走馬の熱中症発症頭数は、「2018年にかけて発症頭数は徐々に増加傾向でしたが、積極的な暑熱対策を講じ始めた同年以降は40頭前後で横ばいとなっています」(JRA広報)。これらの対策が功を奏しているようだ。

 来年からは新たな暑熱対策として、北海道以外では熱中症リスクが著しく高い時間帯での競馬を休止する。1Rの発走が9時30分ごろとなり午前に5競走を実施。11時30分ごろから15時ごろまで休止時間を挟んで、最終競走は18時30分ごろとなる見込みだ。加えてパドック周回時間の短縮や装鞍所集合時刻の繰り下げも検討されている。

 人にも競走馬にも危険となりつつある、昨今の暑さ。新たな対策の行方を見守りつつ、これ以上事態が悪化しないことを願いたい。

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