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鹿革馬具が開く暑熱対策の未来

スポニチ
  • 2023年11月08日(水) 10時20分
 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の小林篤尚(46)が担当する。JRAは猛暑を受け、来年から開催時間の変更などに動いた。馬具でも暑熱対策を――。鹿革を使った馬具「放熱バンテージ」の普及を目指す馬具メーカーmiru.の西岡秀華代表に話を聞いた。

 腕に冷たさが伝わった。水でぬらした放熱バンテージを巻くだけで、ひんやり気持ちいい。これを馬の脚部に巻くことで、放熱効果があるという。株式会社miru.の西岡秀華さんは「メソポタミアの時代、鉢巻きには鹿革が使われていました。データを取れない時代からも、鹿革で放熱できることを知っていたんですね。それを復元して、アピールしたいです」と太古から息づくものだと説明。古代の人々は鉢巻きを巻く(=頭部の熱を下げる)ことの大切さと、それには鹿革が適していることを知っていた。

 常温の水でぬらして馬の脚部に巻くと、皮膚の温度が約2度ほど下がる。冷却ではなく放熱。それが4〜5時間ずっと続く。メンテナンスを行えば、半永久的に使える。水に触れるだけにフレグモーネ(傷腫れ)を心配する向きもあったが、その点もクリア。「暑い夏場のレース後や、脚元の弱い馬に使ってもらえれば。熱中症の対策にもなると思います」と見通しを語る。猛暑にフィットする馬具と言える。現在は厩舎でテストなどを行っている。

 JRA・G126勝を挙げた角居勝彦元調教師が2年前から開発に携わっている。先月25日に栗東トレセンを訪れた角居氏は「加工されているとはいえ生きている皮。呼吸もします。馬具は海外が主流ですけど、日本にも独自の鹿革なめしの技術があることを世界に証明したい。ジャパン・ブランドとしての活動です」と語った。

 長野県諏訪産の和鹿を使っている。「食性とか土がいいのか肌ツヤがいいですね」と話す。一個一個手作業で縫製しているので、機械での大量生産ができない。完成まで2、3カ月はかかるという。「前脚で1セットと考えると年間で出せるのは100セットくらいかな」とのこと。希少な商品ゆえ、ずっと使えるのはうれしい。

 秀華さんはもともと馬が好き。奈良県宇陀市長の紹介で、鹿革なめしと出合った。馬具そのものにも造詣が深い。馬のことを思って、日々活動している。「皆さんに鹿革の概念を知ってほしい。そして奈良の技術を発信していきたいです」と語った。これからも猛暑は続いていくだろう。さらに厳しさを増すかもしれない。馬具が開く暑熱対策の未来。本格的な実用化へ向けての取り組みが続く。

 ◇小林 篤尚(こばやし・あつひさ)1977年(昭52)3月31日生まれ、大阪府枚方市出身の46歳。04年からボートレース担当。16年に中央競馬へ。

 ○…miru.が企画、販売を行う森の天然水とエチゴスギ蒸留水を使ったクリアミスト「SUGI(スギ)」とmiru.のステッカーを3人にプレゼント。応募方法はX(旧ツイッター)のスポニチ競馬Web(@sponichikeiba)を参照してください。

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