今年の
阪神ジュベナイルフィリーズ(10日=阪神芝外1600メートル)は「新種牡馬」の産駒が多数出走することで注目を集めている。
京王杯2歳Sを制した
コラソンビート、
スウィープフィートの父
スワーヴリチャードを筆頭に、
ブリックスアンドモルタル(
クイックバイオ)、
カリフォルニアクローム(
スプリングノヴァ)、
アルアイン(
テリオスルル)、
ニューイヤーズデイ(
ニュージェネラル)と新種牡馬の産駒がトータル6頭もスタンバイしているのだから、新しい風を感じずにはいられない。
一方、「新人」に目を移せば、今年3月に新規開業した
小栗実調教師が管理する
ナナオ、
プシプシーナの2頭をGIに初エントリー。開業初年度でのGIタイトル奪取となれば、2008年
鹿戸雄一調教師(
ジャパンC=
スクリーンヒーロー)以来となる
JRA史上7人目の快挙(
グレード制導入の1984年以降)となる。
もっとも、当の若き指揮官は「挑戦させていただけるのはありがたい。ただ人間のほうがイレ込んで、いつもと違うことをしても、いいことはないですから。普段通りに臨めたら」と大一番を前にも泰然自若。目の前のことを一歩ずつ確実に、地に足をつけた日々を重ねながらも…。
「GIで中途半端な仕上げをするわけにはいかない。しっかり100%の力を発揮できるように仕上げないと。そう思っています」と胸の内には熱いものを燃やしている。
プシプシーナは新馬→
白菊賞と無傷の2連勝。410キロ台の小柄な馬ながら「どこに行っても物怖じしない性格で、普段はメンコをしなくても調教を普通にこなせるくらい。特に牝馬は競馬場に行ってイレ込む馬が多いが、そのあたりの心配がないのはこの馬の強みですね」と腕を撫す。中1週のタイトな臨戦過程も「いい意味でオンオフがしっかりしていて、全然疲れていない。体重こそ変わらないが、筋肉がボリュームアップしてきた」なら心配ご無用だ。
ナナオはここまで4戦4連対。崩れることなく着実に
ステップアップして、前走のもみじSで待望のオープン勝ちを手にした。「前走は残り100メートルくらいで流す余裕があった。強い内容だったと思います」と振り返る指揮官は「初めての距離、(直線に)坂のあるコースなど未知数の部分はあるが、この馬の強みは心肺機能。それを生かせる競馬ができれば、勝負になるんじゃないかと」。
プシプシーナだけでなく、両馬ともに色気を持っての参戦となる。
そんな小栗調教師のモットーは「固定観念にとらわれないこと」。GI初挑戦の高い壁を打ち破り、競馬界に新たな風を吹かせるのか。その手腕に注目せずにはいられない。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ