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中野栄治師 忘れない19万人の“ナカノ・コール”!アイネスフウジンで90年ダービーV

スポニチ
  • 2024年01月31日(水) 05時30分
 ◇さらば伯楽(1)

 今年は東西トレセンで7人の調教師が70歳定年制により3月3日をもって引退する。美浦の中野栄治師(70)は騎手、調教師として53年のキャリア。アイネスフウジンで制した“ナカノ・コール”の90年ダービーは語りぐさ。調教師としてはスプリント王トロットスターを手がけた。

 騎手として24年、調教師として29年。後悔はたくさんあるが、未練はない。

 「過去どうこうは振り返らないよ。いいことでも悪いことでもね。いろいろなことを積み重ねて今の自分があるんだから」

 大井で騎手・調教師をしていた父・要氏に憧れ、競馬の世界に。71年のデビュー当初から美しい騎乗フォームでファンを魅了した。

 「重心高く前傾姿勢で乗ることで、爪1個分1完歩が大きくなる。当時は先輩から“なんだそれ”って文句を言われることもあったけど、俺は30年先を見ていたんだよ(笑い)」

 騎手としての転機は89年夏。福島競馬場へ向かう際に起こした交通事故で1カ月の騎乗停止を科された。途方に暮れて閑散とした美浦トレセンへ。たまたま居合わせた加藤修甫師から声がかかった。「うちの馬に乗ってみないかって。その馬がアイネスフウジン。乗ってみたら前輪がパンクした自転車みたい。トモが凄くて前が弱い。でも、間違いなく走る馬だな、と感じたよ」。

 1番人気の皐月賞はスタートの不利と遅いペース、仕掛け遅れが重なり悔しい2着。必勝を期して臨んだダービー。1角までに楽に先手を奪う。「とにかくメジロライアンとの距離だけ気をつけて。ハイペースでも一定の距離さえ保てば差されないと思ったから」。思惑通り、前半のリードが生きて逃げ切り勝ち。当時のレコードタイムで世代の頂点に立った。

 レース直後には19万を超える人が「ナカノ・コール」。歓声に気づいたのは1角と2角の間。ヘトヘトになったアイネスフウジンをねぎらっていた時。「いつも通りで行ったら転んじゃうと思ってゆっくり帰ろうと。そしたらみんないなくなっちゃって…。コールが聞こえた時は鳥肌が立った。オーナーは“池に石を落とした感じだった”と言っていたね」。コールは波紋が広がるように大きくなったのだと言う。

 96年、厩舎を開業。01年には管理馬トロットスター高松宮記念スプリンターズSを勝利し、同一年春秋スプリントG1制覇。「こぢんまりした馬だったけど、その分バネがあった。精神力も強かったよ」。トロットスターを含め5頭の重賞馬を管理したが「もちろん重賞勝ち馬に思い入れはある。でも未勝利馬にだって同じように接してきたし、管理した全頭が思い出の馬だよ」としみじみ語った。

 ◇中野 栄治(なかの・えいじ)1953年(昭28)3月31日生まれ、東京都出身の70歳。71年3月、荒木静雄厩舎で騎手デビュー。通算3670戦370勝、重賞16勝。主な騎乗馬はドロッポロードスーパーグラサードアイネスフウジン。95年に調教師免許を取得し、翌年3月に厩舎開業。JRA通算6564戦288勝、うち重賞8勝(31日現在)。主な管理馬はトロットスターカイザーメランジェ(現役)、ブローザホーン(現役)。

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