万感の思いを胸に、ジョッキーとして最後の戦いに挑む。
秋山真一郎騎手(45)=栗東・フリー=が調教師に転身するため、今週末でステッキを置く。97年にデビューし、今年で28年目。最後まで勝利を目指し、ジョッキーとしての責務を果たす。
幼少期から憧れた騎手道を突き進んだ。調教師転身のため、今週がラス
トライドとなる秋山真。「競馬に乗れなくなるのが悲しい」。今の心境をこう吐露する。
騎手だった父を追い、それ以外の道は考えられなかった。97年のデビューで夢がかない、
河内洋(現調教師)や
武豊らのフォームに魅せられた。「きれいに、丁寧に乗ること」を貫き、JRA通算1058勝、G1・2勝を含む重賞38勝、JRA全10場重賞制覇と輝かしい成績を残した。
幼なじみの
武幸四郎、同期の
村田一誠が調教師に転身しても、騎手引退という選択は片隅にもなかった。ただ、予期せぬ形で転機が訪れる。20年10月、調教中に落馬して骨折-。「腰を金属で止めているから違和感がある。一番残酷なのは映像。ズレがあって自分にがっかりした。騎手以外だったら調教師しかないと思っていたから、そろそろかな、勉強しよかって」。昨年12月、新規調教師免許試験に一発合格した。
多くの思い出から、1番人気で鼻差2着に敗れた
ベッラレイアの07年
オークスを挙げた。「いろんな感情があって一生忘れられない。あれがあって、乗り方、
バランス、重心をすごく意識するようになった。ターニングポイント」と振り返る。
ラストウイークは土日とも小倉で計12鞍に騎乗。「多くの方に感謝しています。やることは一緒。馬の全能力を出せるように頑張ります」と自然体を強調する。「チャンスが続いているから」と期待するのは連続2着の日曜3R
ジューンアース。同11R
ダンツイノーバは「展開がハマれば」と2走前Vの再現を狙う。「未練と後悔しかない。やり切った感もない。アッという間。それだけ楽しかったんだと思う。調教師になっても同じぐらい楽しみたい。そしたら最高ですよね」。華麗なフォームで最後まで騎手を全うする。(デイリースポーツ・井上達也)
提供:デイリースポーツ