昨年の
日経賞(GII・芝2500m)に優勝した
ネコパンチ(牡7)が、11月20日(水)付けで競走馬登録を抹消した。愛らしい名前と大逃げという個性的なレース振りで人気を博した同馬は、今後、東京競馬場で誘導馬を目指す予定だ。現在、美浦トレーニング・センター「乗馬苑」にて、第2の馬生に向けてひと休み中の
ネコパンチの表情と、関係者のコメントをお届けする。
星野忍調教師は「障害練習もしていたのですが、水濠障害に寄りつかないんですよね。障害の裏側から、厩務員が引いて一緒に水の中に入ったりもしましたが、ダメでした。元々、水たまりをよけて通ってはいたのですけどね。プールや温泉には喜んでスイスイ入っていくのに、不思議ですよね(笑)。それで
福島記念(GIII・芝2000m・16着)に出走させたのですが、途中でもう気持ちが途切れてしまうんでしょうね。
これまでよく働いて頑張ってくれましたし、余生は幸せなものにしてあげたかったので、オーナーとも相談して
JRAに打診しました。ファンの多い馬でしたし、可能なら誘導馬にでもなってくれればという気持ちもありましたしね。水曜日に東京競馬場で受け入れてくれるという連絡が来て、その日の午後に馬運車が迎えに来ました。もう走らなくていいとわかっていたのかな。大人しく
スースーと乗り込みましたよ」と、ホッとした表情を見せた。
担当の及川雅章厩務員も「重賞を勝ってくれましたし、この馬にはいろいろと教えてもらいました。砂浴びが大好きで、人懐っこい馬でしたよ。運動中に立ち上がったり、度を越したじゃれ方もしましたけど、遊んでほしくてやっていましたからね。
昨年は蹄を痛めて放牧に出ましたが、それ以外はずっと厩舎にいました。これだけ長く一緒にいる馬もあまりいないですし、やはり寂しいなと思いました。でも東京競馬場ならいつでも会えますし、それを考えると寂しくなくなりましたね」と、苦楽を共にした相棒の行先が決まり、終始笑顔だった。
ネコパンチは、11月23日(土)に去勢手術を受け、態勢が整い次第、東京競馬場に移動することになっている。近い将来、誘導馬としてファンの前に登場する日を楽しみに待ちたい。(取材・写真:佐々木祥恵)