リアルスティールが栗東坂路のゴールを迎えた瞬間、矢作師はニヤッと笑い「設定通り」とひと言発した。馬が引き揚げてくると「完璧なラップだよ」と福永に声をかける。指揮官が追い切り直前にオーダーした数字は、4F54秒5〜55秒5。先導役の
トニーポケット(6歳障害未勝利)に騎乗した安藤助手のグッドワークもあり、4F54秒6-39秒8-12秒4という青写真通りのタイムで最終デモを打ち上げた。
先週までにほぼ仕上がっていたこともあるが、レース当週はハードに攻めないのが福永の主義。併走馬をラスト100m地点で馬なりのままとらえてからも追うことはなかったが、それでいて2馬身半突き放した。「反応が良過ぎ。キレキレだった」と鋭さを絶賛。「前走よりも動ける感じになっている」と満足そうにうなずいた。
前走の
皐月賞は
ドゥラメンテに1馬身半差と、完敗とも言える2着。だが今回は舞台も距離も違う。「東京は直線も長いので、末脚を生かすような競馬ができれば。勝負付けが済んだとも思っていない」と決意を込める。今のところ、いい意味で緊張もしていない。「いつもは(前週の)
オークスが終わったら気持ちが高まってくるんだけど。馬の状態が良く、不安がないからかな」と頬を緩めた。
あとは決戦を待つばかり。「スタッフと連携して、現時点でできることは大抵できている。最後のバトンを受け取って一番いい結果を出せるように頑張りたい」。16度目の挑戦で、父・洋一さんがなし得なかったダービー制覇へ。新馬戦から手綱を取り続けてきたスティールとともに一世一代の走りを見せる。
提供:デイリースポーツ