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サンデーサイレンスの弱点を補った欧州の血脈

  • 2014年05月02日(金) 12時00分


◆母系にドイツのステイヤー牝系を持つワールドエース

 ワールドエースが復活した。人によって配合の好みはいろいろだが、数いるディープインパクトの素質馬のなかで、最も私が好きなのがこのワールドエースの配合だ。

 母系はドイツが頑固に守り育てたステイヤー牝系で、馬名の頭に「M」がつくファミリー。母の父アカテナンゴもドイツ年度代表馬3回。種牡馬となってもドイツのリーディングサイヤーに5度輝いている。

 サンデーサイレンスはヘビーな欧州のステイヤー牝系や、欧州で活躍した種牡馬と相性が良かった。それをいち早く証明したのが、トニービン(凱旋門賞)であり、ニジンスキーであった。初期にこの配合からアドマイヤベガ(日本ダービー)、ハーツクライ(ドバイシーマクラシック)、ダンスインザダーク(菊花賞)、スペシャルウィーク(日本ダービー)といった大物が誕生している。

 本質的にサンデーサイレンスは、アメリカのライトな短中距離血統であり、成長力やスタミナを持っていたわけではない。事実、同じライトな繁殖牝馬との配合では、早熟馬やマイラータイプが多かった。この難題を解消してくれたのが、欧州で活躍したステイヤー種牡馬や欧州の名牝系である。

 それが中期以降のマンハッタンカフェ(菊花賞)、ネオユニヴァース(日本ダービー)、ディープインパクト(三冠馬)といった大物の誕生につながった。

 そのサンデーサイレンスも後継種牡馬の時代に移行している。ディープインパクト産駒のキズナは母の父がストームキャット、ジェンティルドンナは母の父がダンジグ系。一転して今度は、アメリカのライトな血統が合うという見方もできるが、ディープインパクトに欧州血統に特有の重たさはない。もう1世代ぐらいは、サンデーサイレンスを踏襲する配合でもいいと思っている。

 屈腱炎から立ち直ったワールドエースに、そのお手本となる出世を期待したい。それにしても医療の進歩はめざましい。かつて屈腱炎は不治の病と言われ、復帰しても元通りの姿になるのは絶望的だった。しかし、ウインバリアシオンもみごとな復活を遂げ、今週の天皇賞・春に駒を進めている。

 有力候補のキズナを筆頭に、ゴールドシップ、フェノーメノら手強いメンバーが揃っているが、この馬にもそろそろGIを勝たせてやりたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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