◆母系にドイツのステイヤー牝系を持つワールドエース
ワールドエースが復活した。人によって配合の好みはいろいろだが、数いるディープインパクトの素質馬のなかで、最も私が好きなのがこのワールドエースの配合だ。
母系はドイツが頑固に守り育てたステイヤー牝系で、馬名の頭に「M」がつくファミリー。母の父アカテナンゴもドイツ年度代表馬3回。種牡馬となってもドイツのリーディングサイヤーに5度輝いている。
サンデーサイレンスはヘビーな欧州のステイヤー牝系や、欧州で活躍した種牡馬と相性が良かった。それをいち早く証明したのが、トニービン(凱旋門賞)であり、ニジンスキーであった。初期にこの配合からアドマイヤベガ(日本ダービー)、ハーツクライ(ドバイシーマクラシック)、ダンスインザダーク(菊花賞)、スペシャルウィーク(日本ダービー)といった大物が誕生している。
本質的にサンデーサイレンスは、アメリカのライトな短中距離血統であり、成長力やスタミナを持っていたわけではない。事実、同じライトな繁殖牝馬との配合では、早熟馬やマイラータイプが多かった。この難題を解消してくれたのが、欧州で活躍したステイヤー種牡馬や欧州の名牝系である。
それが中期以降のマンハッタンカフェ(菊花賞)、ネオユニヴァース(日本ダービー)、ディープインパクト(三冠馬)といった大物の誕生につながった。
そのサンデーサイレンスも後継種牡馬の時代に移行している。ディープインパクト産駒のキズナは母の父がストームキャット、ジェンティルドンナは母の父がダンジグ系。一転して今度は、アメリカのライトな血統が合うという見方もできるが、ディープインパクトに欧州血統に特有の重たさはない。もう1世代ぐらいは、サンデーサイレンスを踏襲する配合でもいいと思っている。
屈腱炎から立ち直ったワールドエースに、そのお手本となる出世を期待したい。それにしても医療の進歩はめざましい。かつて屈腱炎は不治の病と言われ、復帰しても元通りの姿になるのは絶望的だった。しかし、ウインバリアシオンもみごとな復活を遂げ、今週の天皇賞・春に駒を進めている。
有力候補のキズナを筆頭に、ゴールドシップ、フェノーメノら手強いメンバーが揃っているが、この馬にもそろそろGIを勝たせてやりたい。