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日本ダービーで狙ってみたいベルキャニオン

  • 2014年05月30日(金) 12時00分


◆イスラボニータには不安要素が…

 昔からフジキセキが好きで、雑誌の特集で何度も書き、拙著『血のジレンマ』でもページを大きく割いて取り上げてきた。それでも日本ダービーを勝つイメージだけは、どうもわいてこない。

 イスラボニータの皐月賞までのレース内容は完璧に近い。しかし父フジキセキの本質は短中距離血統で、過去、日本ダービーで馬券に絡んだのはドリームパスポートの1回だけ。それも3着で、母系がスピード系というのも気になる。あっさり勝つシーンが考えられる一方で、落とし穴が潜む危険性も漂う。

 血統論者を嘲笑う勝利を期待したいが、1番人気が予想されるだけに穴党としては買いづらい。無謀を承知でベルキャニオンを狙ってみる。プリンシパルSがダービートライアルとして新設されたのは1996年。その第1回の優勝馬ダンスインザダークが本番でもクビ差2着となったが、以後が不振。優勝馬はおろか2着馬も出ていない。

 それでもダイワスペリアー、マチカネアカツキ、アントニオバローズらが3着に入っている。プリンシパルSに至るまでの実績と、ここ一番の底力を秘める血統背景なら、馬券に絡む可能性は残されている。皐月賞は7着だが、直線の短い中山をあの後方から届くはずがない。しかし最後の伸びは素晴らしく、イスラボニータにコンマ5秒差だった。

 元より東京巧者。デビュー2戦目をレコード勝ちし、共同通信杯はイスラボニータにコンマ2秒差の2着。父ディープインパクトは3世代から2頭のダービー馬を出している。母も送り出した産駒5頭がすべてオープンで活躍。全体に中距離の活躍馬が多いが、この馬は2400mも大丈夫とみる。

 ワールドインパクト、トーセンスターダムも、父がディープインパクトだけに母系も優秀だ。前者の母の父ピヴォタルは、英オークス馬や独ダービー馬を出している。スタミナ勝負なら浮上してくる。皐月賞2着のトゥザワールド。弥生賞でそのトゥザワールドにハナ差2着、皐月賞も直線だけで4着の競馬をしたワンアンドオンリーも不気味。後者の父ハーツクライは先週のオークスをヌーヴォレコルトが勝って波に乗っている。勝てば2週連続のクラシック制覇となる。

 馬主はオーナーブリーダーの前田一族。昨年の優勝馬キズナでおなじみだ。こちらも勝てば一族の2年連続となる。過去にシンボリルドルフ、シリウスシンボリが2年連続制覇を成し遂げている。続くときは意外に続くもの。その線も考えておこう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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