▲3月3日にデビューした3名の新人騎手の中で、初勝利一番乗りを挙げた西村淳也(にしむらあつや)騎手
3月3日にデビューした3名の新人騎手。その中で初勝利一番乗りを挙げた西村淳也(にしむらあつや)騎手が今回のゲストです。記念すべき舞台は、3月31日の阪神競馬場(6R、ティーブラッサム騎乗)。翌日にGI大阪杯を控え、ムードの高まる競馬場。さらにその週は2場開催で、ジョッキーのレベルが高いなかでの一戦。実際、2着がM.デムーロ騎手で3着が川田将雅騎手でした。“価値ある一勝”を手にした西村騎手。その素顔に迫ります!(取材:東奈緒美)
隣は名手武豊騎手、逆隣りは憧れの松山弘平騎手
東 初勝利一番乗り、おめでとうございます。
西村 ありがとうございます!
東 デビュー以来、初めて3番人気という人気馬に騎乗しての一戦でしたが、やはり狙っていたんですか?
西村 狙っているという意味では毎レース狙っているんですけど、あのときは人気馬でしたし、能力的にも勝ち負けだと思っていたので、いつもとはまた違う意識はしていました。
東 どんなレースをイメージして臨みましたか?
西村 前の位置につけられたらいいなと思っていました。でも、いざゲートが開いたらすぐに閉められてしまって、そのまま中団よりやや前で運ぶかたちになってしまったんですが、なぜか意外と冷静に乗れたんですよね。馬の能力も感じていましたし、このままいけば絶対に勝ち負けになるだろうと思っていたので、最後まで焦らずに乗ることを心がけました。
東 そうだったんですね。馬も落ち着いた様子でしたし。
西村 はい。本当に乗りやすい馬ですし、よく頑張ってくれたと思います。
東 レース前は、厩舎関係者の方とどんなお話をされたんですか?
西村 とりあえず前に行って、4コーナーを回ったら先頭に立っているイメージで乗ってくれという指示を受けました。道中は前に行けませんでしたが、4コーナーでは指示通りに先頭近くまでいけたので、内心「よしよし」という感じでしたね。
東 勝てるかもという手応えは、どのあたりで感じましたか?
▲「勝てるかもという手応えは、どのあたりで感じましたか?」
西村 4コーナーを回った時点でいつでも弾けられるくらいの手応えだったので、その時点でもう。早くゴール板がこないかなぁと思っていました。
東 やはりゴール板までが長く感じましたか?
西村 いえ、追い出してからは早かったです。ふと気づいたら残り200mまできていましたからね。いけるかな、いけるはず! と思いながら、ずっと追ってましたね。
東 あの週は2場開催だったこともあり、ジョッキーのレベルが高いなかでの一戦でしたよね。そのあたりは意識されていましたか?
西村 はい。実際、2着がデムーロ騎手で、3着が川田さんでしたから…。トップジョッキーに混じって戦う自分がいて、しかもそのなかで勝てるなんて。正直、ちょっと舞い上がってしまいました(笑)。
東 大きな自信になったのではないですか?
西村 そうですね。もちろん、いつも自信を持って乗っているつもりなんですけど、あの勝利でもうひとつ自信のレベルが上がったような気がします。
東 ひとつ勝ったことで、ご自身のなかではどんな変化が?
西村 なんかもう、本当に落ち着きました。ひとつ勝つまでは「勝たなくちゃ!」というプレッシャーがあって、気持ちばかりが焦って。走るのは馬なので、僕が焦っても意味はないんですけどね(苦笑)。でも、初勝利を挙げたことで安心したのか、デビューした頃に比べたら、少しは周りを見れるようになったかなと思います。デビュー戦なんて、自分が思い描いていた競馬がまったくできませんでしたから。
東 デビュー戦は3月3日の阪神1R、自厩舎(田所秀孝厩舎)のマエガミという馬でしたね。
▲デビュー戦のパドック。自厩舎のマエガミに跨り、いよいよジョッキーとしての船出 (C)netkeiba.com
西村 はい。先生からは「前に行けるなら行ってこい」と言われていたんですが、まずスタートからあまり出せなくて…。競馬学校の頃は、けっこうスタートには自信があったんですけど、実際の競馬となると全然ダメです。ゲートについては、先輩にもいろいろ教えていただいたりしてるんですけど、今もまだうまくいかないことが大半ですね。
東 まぁまだデビューして1カ月ですからね。それにデビュー戦でいえば、緊張もあったでしょうし。
西村 そうですね。たしかに返し馬まではすごく緊張していたんですけど、ゲート裏に行って「今から本当に競馬に乗るんだな」と思ったら、緊張より不安のほうが大きくなったのを覚えています。しかも、デビュー戦から隣のゲートが武豊騎手(6枠8番)で、逆隣りは僕が憧れる松山先輩(7枠10番)で…。そういう状況にもすごく緊張してしまいました。
東 そういえば、そのデビュー戦でいきなり他馬の落馬があったんですよね。カラ馬が前にいて、さぞかし動揺したのでは…。
西村 スタート直後に落馬があって、そのあとすぐに川田さんが「カラ馬がいるから気を付けろよ」と言ってくださったおかげで、注意して乗ることができました。
東 そうだったんですね。それにしても川田さん、すごく冷静。
西村 さすがですよね。僕は川田さんの声を聞き取るだけでも必死でしたが、川田さんは集中しつつも僕を気にかけてくれて。すごいですよね、ホント。
(次回へつづく)