「次は自分たちだ」という自覚が生まれチャンスをものにした
今年最後の社会人野球のビッグイベント、都市対抗野球大会が9日(木)に閉幕しました。
当日の決勝では熊本県大津町(おおづまち)のHonda熊本と東京都の東京ガスが対戦。東京ガスが4点差をつけて迎えた9回表、Honda熊本が3ランホームランで1点差に追い上げ、さらに一打逆転のチャンスを作ったものの、そこを凌いだ東京ガスが初優勝しました。
この試合で28年連続30回目となる決勝実況を担当していた私、Honda熊本の猛反撃には興奮しちゃいました。何年か前、夏の高校野球決勝で中京大中京を追い詰めた日本文理のあの猛攻を思い出したほどです。
若いときとは違って、この歳になると、単に試合をおもしろいと思うだけでなく、いろいろなことを考えてしまいます。
都市対抗で優勝した東京ガスでは、大卒入社2年目の選手が活躍しました。去年は予選で敗退したため、新人の年に悔しい思いをした選手たちです。
一方のHonda熊本。去年まで正捕手で4番を打っていた選手がコーチ専任となり、今年は攻守の要が抜けた形になりました。
そこで今回、4番に大卒新人を起用したところ、この選手がサヨナラを含む2本のホームランを放って決勝進出に貢献。捕手は同じく大卒新人と高卒入社3年目の選手を併用すると、大卒新人は好リードで投手陣を引っ張り、高卒3年目の選手は決勝の9回に反撃の特大3ランをかっ飛ばすなどして活躍したのです。
東京ガスもHonda熊本も、ともに“若い力”が勝利の原動力になったということ。とくにHonda熊本は、“不動の中心”だったベテランがいなくなって若手にチャンスが与えられ、その選手たちがベテランの穴を補って余りあるほどの働きを見せたわけです。
我が身を省みれば、都市対抗野球はもう33年、テレビ東京の競馬中継は32年も続けてきました。いまだにその仕事を続けさせていただいているのはありがたい限りですが、私がいるために若手の成長を阻んでいるのではないか、とも思っています。
Honda熊本の躍進を見ているうちに、取って代わるような人がいないからベテランを起用し続ける、というのはいかがなものか、と感じました。そのベテランが退けば、誰かがそれに取って代わるはずです。
私が実況に携わって今年で15年目を迎えたバドミントンも同じ。東京オリンピックでひと区切りがつきトップの2ペアが抜けた日本の男子ダブルスで、保木・小林組が新たなエースペアにのし上がりました。上の2組が抜けて「次は自分たちだ」という自覚が生まれ、チャンスをものにしたのです。
私もそろそろいろんなことを覚悟しておかなければいけないんでしょうね。
とはいえ、私にも生活があります。若い人たちにとっての“余計な重し”にならないように気をつけつつ、もう少し今の仕事を続けられたらと願っているこの年の瀬です。