2017年中山大障害(J・GI)優勝馬 オジュウチョウサン(写真提供:JRA)
『勝つとか負けるよりもとにかく無事に帰ってきて欲しいですね』
中山大障害(J・GI)へ向けて想いを語るのはオジュウチョウサンの生産者である坂東牧場の代表・坂東正積(ばんどう・まさかず)さん。おそらく全国のファンも同じ気持ちではないだろうか。
10歳の暮れを迎えたオジュウチョウサン。稀代の名ジャンパーの競走生活も晩年に差し掛かっている。去年秋に障害の連勝記録が途切れ、今年に入ってからも中山グランドジャンプで5着、剥離骨折の手術明けの東京ハイジャンプで3着。それでも年を重ねた今も大崩れはしない体力と強靭な精神力は『人に対して獰猛だった』という母と生産から中期、後期の育成を担う牧場スタッフのサポートによりもたらされた。
『幼い頃は、体のゆるさはあったんですが、ケガやトラブルで休むこともなく、丈夫に鍛える事ができました。オジュウチョウサンの体幹の強さや芯の強さの土台を作る事ができたと思っています』。まだ強さに半信半疑だった頃、最初にJ・GIのタイトルを掴んだ時に感じた感激。極悪馬場の中、闘い抜いた去年の中山グランドジャンプ。
最初にJ・GIのタイトルを掴んだ2016年中山グランドジャンプ(J・GI)(写真提供:JRA)
2020年中山グランドジャンプ(J・GI) 不良馬場での勝利(写真提供:JRA)
思い出のレースはあれど、生産者としての想いはやはり冒頭の言葉にも詰まっている。『障害レースに関しては、ゴールするまでヒヤヒヤですから…中年の星どころか高齢者ですけども、とにかくラストまで無事にと願っています』。牧場には多くのファンから写真が届き、坂東さんの心もファンとともにある。オジュウチョウサンの、そして出走全馬の無事を願って、暮れの大一番を見届けよう。
筆者プロフィール:小堺翔太
タイムリーオフィス所属。タレント、フリーアナウンサー。
中央競馬全レース中継キャスターをはじめ、中央・地方問わずグリーンチャンネルの競馬番組に多数出演。