『大人しくて、手のかからない子だったと記憶しています。同期の馬にいじめられていて、立ち位置は弱かったですね』
牧場にいた頃は、決して目立つタイプではなかったと振り返るのは、生産者の芳住鉄兵(よしずみ・てっぺい)さん。しかしやがて「ミューチャリー」と名付けられたその馬は、今年のJBCクラシック(JpnI)を地方馬として初めて制覇。日本ダート界の頂点に立った。
JBCクラシック(JpnI)を地方馬として初めて制覇したミューチャリー(写真提供:地方競馬全国協会)
牧場にとって初めてのJpnI出走もこの馬。ただ、地元・南関東の重賞は勝利するものの、ダートグレードではあと一歩、というレースが続いていた。正直、もう交流重賞は勝てないかもしれない…と思う中、白山大賞典(JpnIII)のレースぶりに光を見た。
『初の長距離輸送やコースを経験し、他の馬よりもアドバンテージがあると思いましたので、実は内心(JBCクラシックを)勝てそうだな、と思っていました。もし勝ったら何か記念に作ろうと思い、レース前からその話をしていましたね(笑)』
当日は、発走数十分前まで牧場仕事をこなし、テレビの前へ。
最後の直線は長く、長く感じられた。
『オメガパフュームが迫って来たこともあり、早くゴールしてくれ! と思っていました。ゴールの瞬間は言葉にならない程、嬉しかったです』
多くのお祝いと反響。SNS等で沢山のファンの存在も知った。
オメガパフュームの追い込みを振り切るミューチャリー(写真提供:地方競馬全国協会)
『皆に応援していただける馬を牧場から送り出せた事を嬉しく思います。東京大賞典のオメガパフューム4連覇挑戦の雰囲気をいい意味で壊してくれるのはミューチャリーだと思っています。引き続き、応援をよろしくお願いします』
超豪華メンバーが出走予定の東京大賞典。JRAと地方が誇る“芦毛の両雄2頭“対決の行方にも大いに注目したい。
筆者プロフィール:小堺翔太
タイムリーオフィス所属。タレント、フリーアナウンサー。中央競馬全レース中継キャスターをはじめ、中央・地方問わずグリーンチャンネルの競馬番組に多数出演。