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【ブリーダーズC】史上最多9頭の日本馬が遠征 変わりゆく海外遠征の“狙い目”とその背景

  • 2023年10月30日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲ブリーダーズCへの遠征は今後定着していくのか?(C)netkeiba.com


 本稿の公開4日後には、米サンタアニタ競馬場で、第40回ブリーダーズカップ(BC)が始まる。11月3、4の両日、計14のG1が施行される北米最大のイベントは、今回が40回の節目。日本から9頭が遠征予定で、メインカードのクラシック(ダート約2000m)を始め、ターフ(芝約2400m)、フィリー&メアターフ(以下FMT=芝約2000m)、マイル(芝約1600m)の4競走は、JRAの馬券発売が決定。「クラシック」には、3月に日本馬初のダート施行のドバイWCを制したウシュバテソーロ(牡6)、UAEダービーを圧勝したデルマソトガケ(牡3)が出走予定。「ターフ」には2021年の日本ダービー勝ち馬シャフリヤール(牡5)、「マイル」には国内で1600mGIを3勝したソングライン(牝5)、ウインカーネリアン(牡6)が参戦。FMTにウインマリリン(牝6)が出走。馬券の発売はないが、メイケイエール(牝5)も、フィリー&メアスプリント(ダート約1400m)かターフスプリント(芝約1000m)に出走予定。ジャスパークローネ(牡4)、未勝利馬のエコロネオ(牡2)も現地入りしている。BCに9頭が遠征するのは史上最多。半面、10月1日の仏G1・凱旋門賞(芝2400m)は、複数GI勝ち馬2頭を含め4頭が参戦した前年とは対照的に、GI未勝利のスルーセブンシーズ(牝5)1頭。日本馬の海外遠征の流れは変わったのか?

道悪に懲りて? GI馬不出走


 こと日本の競馬界に限っていえば、今回の凱旋門賞に臨む姿勢は近年とは様変わりだった。5月に発表された第1回登録段階で、日本馬は3頭だったが、少なくとも当時の立ち位置を見れば、「軽量」と言わざるを得ない顔ぶれだった。3頭中GI勝ち馬はドゥラエレーデ(牡3=ホープフルS優勝)のみだったが、GI勝ちも展開に恵まれたもので、3歳になってからはUAEダービーでデルマソトガケに離された2着に入ったものの、帰国後は日本ダービーで落馬競走中止、宝塚記念とセントライト記念が10、8着。結果的に、そもそも無理筋だった。残り2頭のうち、サリエラ(牝4)は現時点で重賞未勝利。登録時は3歳時のローズS(GII)2着とリステッドの白富士S勝ちが目立つ程度。5月以降は目黒記念、新潟記念で3、7着。小柄で瞬発力が武器のディープインパクト産駒という属性から、本気度も薄かったと思われる。

 結局、唯一の遠征馬となったスルーセブンシーズは、中山牝馬S(GIII)で重賞初制覇を飾って登録に至った。ただ、当時のレーティング(RT)はまだ105。GI級には程遠かったが、馬が充実期にあったことが、次の宝塚記念で証明された。良馬場とは言え、得意とするタフな馬場状態。流れが速かったことも幸い。後方から末脚を伸ばすと、直線はスムーズさを欠く場面もありながら、国内最強馬イクイノックス(牡4)にクビ差まで迫った。RTも一気に117まで上昇。牡馬換算なら121で、超一流の仲間入りを果たした。実はこの時点でも、陣営は遠征に慎重で、馬主のキャロットファーム(NF)の秋田博章代表は「ナーバスな面があり(1頭では)難しい」と話していた。結局、9月15日に現地入りし、本番で4着と健闘。13年のオルフェーヴルとキズナ(2、4着)以来、10年ぶりに5着以内入着を果たしたのだが、6月末時点での空気感は前向きだったとは言い難い。

教えてノモケン

▲登録された日本馬3頭のうち、出走したのはスルーセブンシーズのみ(撮影:高橋正和)


イクイノックスが行っていれば…


 一方、宝塚記念を勝ち、国内外GI4連勝を飾ったイクイノックスの陣営は早々に「下半期は国内に専念」の方針を示していた。3月末にドバイシーマクラシック(DSC=G1・芝2410m)を圧勝。レーティング(RT)129を与えられ、7カ月が過ぎた10月末時点でも、世界ランク1位を守っている。

 国内専念の理由としては、DSC優勝馬が参戦した場合の優勝ボーナス(日本馬は 200万ドル=約3億円)を考慮した面もあろう。勝てば本賞金だけで5億円だが、円安のおかげで8億円に近い。ただ、宝塚記念後、馬主のシルクレーシングの米本昌史代表は「過去の凱旋門賞のレースを十分に吟味した」と述べ、近年の日本馬の不振も影響したことを示唆した。確かに前年、GI・3勝のタイトルホルダーと、ダービーを勝ったばかりのドウデュースが泥田のような馬場の後方でもがく姿は、関係者の心を折るには十分だった。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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