▲レースに向けて、調教の過程から深く関わるスタイルの中谷騎手 (C)netkeiba.com
ここ数年でジョッキーの起用法に変化が現れ、テン乗りや乗り替わりが当たり前の時代となりました。それと同時に、1頭の馬に一人のジョッキーが乗り続けることが貴重となり、そのコントラストは年々強くなっています。
その是非はともかく、やはりジョッキーたちのレースに対する向き合い方も変わってきているはずです。そこで今回は、テン乗りと連続騎乗のメリットとデメリットをどう捉え、どう戦っているのか、様々な立場・年代の現役ジョッキー4人を含む5人のホースマンに直撃取材を敢行。それぞれの感性とスタンスを通して、今を戦うジョッキーたちのリアルに迫ります。
第3回目の証言者は、中谷雄太騎手。2013年に拠点を関西に移し、活動のベースとしている矢作厩舎では、調教の過程から深く関わっています。そんな中谷騎手が最初に語ってくれたのは、自身で仕上げた馬にレースでも騎乗するパターンの連続騎乗。はたして、やり甲斐とデメリットの狭間に生じた葛藤とは──。自身の経験をもとに、リアルな心境を明かしてくれました。
(取材・文=不破由妃子)
素質を感じた馬ほどその馬にとっての先を考える
──中谷さんは、矢作厩舎をベースに活動されていて、普段の調教から密に携わっていらっしゃいますよね。やはり同じ連続騎乗であっても、調教から携わっての連続騎乗にはアドバンテージがあると思いますか?
中谷 もちろんアドバンテージはありますが、デメリットもあると思います。アドバンテージとしては、やっぱり自分が思ったように馬を作れること。お世話になっている矢作先生は、調教の内容も「お前に任せる」と言ってくださるので、そこはやり甲斐がありますね。
──デメリットはどんなパターンで感じたことがありますか?
中谷 ステイフーリッシュで経験したことなんですけど、新馬(1着)とホープフルS(3着)のときは、調教でもレースでも子供がワーッと駆け出すような感じで楽しそうに走ってたんですよ。それが、3戦目の共同通信杯(10着)では、嫌々走っているような気がしたんです。
もともと身体能力の高さに対して心身の成長が追いついていないという弱さを感じていたので、肉体的にも精神的にもきつくなってしまったのかなと僕なりに敗因を考えていたんですが、レースのあと、矢作先生に「お前、次は攻め馬に乗らなくていいぞ」と言われまして。「競馬は次も乗せるけど、調教は厩舎に任せろ」と。
▲「次は攻め馬に乗らなくていいぞ」矢作調教師とのやり取りを明かす中谷騎手 (C)netkeiba.com
──矢作先生は、そこにデメリットが生じていることを感じ取ったんですね。