◆ヨハネスブルグへの配合申し込みが合計710頭に
先週にもちょっと触れたが、去る11月20日でJBBA(日軽種馬協会)所有の種牡馬申し込みが締め切られており、今年はダントツでヨハネスブルグが人気を集めたらしい。
日高管内だけで645頭、これに胆振と本州、本部(東京)に申し込みのあった馬主分を合わせると実に710頭にも上るという。因みに来年度の種付け料は基本契約で150万円と据え置かれており、お手頃価格であることも人気の理由だが、何といっても最大の要因は2歳戦線における産駒の爆発的活躍によるところが大きい。
同馬を繋養するJBBA静内種馬場の中西信吾場長は、この好成績について「海外での産駒成績からもある程度の成功は間違いないだろうと思っていました」と言いつつも「予想をはるかに上回る成績で、本当に喜んでいます」とホッとした表情を浮かべる。
「ちょうど、JBBA種牡馬は、かつてのフォーティナイナーやオペラハウス、チーフベアハートなどから次世代へとバトンタッチする端境期になってきており、数年前には大きく配合頭数が減ってしまっておりました。しかし、その後、このヨハネスブルグやエンパイアメーカー、サマーバードなどを導入することができましたし、バゴやケイムホームなどもそれなりに成績を上げてくれていますので、ひじょうに良い陣容となってきましたね」
その中でも、このヨハネスブルグの成功は特筆もので、現在2歳リーディングサイアーランキングにおいてディープインパクト、キングカメハメハに続く第3位につけている。
ディープとキンカメは言わずと知れた我が国の両横綱ともいうべき大種牡馬。一時まではこれらを抑えてトップを走っていたのだから大成功と言って良かろう。
今週末の阪神JF、来週の朝日杯FSで今年度の2歳戦線における頂点が決まるが、ヨハネスブルグはホウライアキコを阪神JFに送り出す。ここで賞金を上乗せしておかなければ、第4位に迫るゼンノロブロイと順位が入れ替わってしまう可能性がある。
「このままだと手駒がちょっと足りない気がしますね」と中西場長は語る。確かに今年の2歳戦線においては、ディープインパクトが現時点で72頭、キングカメハメハが92頭、第4位につけているゼンノロブロイに至っては101頭もの出走頭数を数えるのに対し、ヨハネスブルグは59頭にすぎない。絶対数で不利な戦いを強いられている感があるのは否定できないのだが、それでもAEIに関してはトップを走るディープインパクトの2.53に続き2.40をマークしている。因みに上位20傑の種牡馬で2点台に乗っているのはこの2頭だけである。アベレージの高さと牝馬の活躍は特筆ものと言って良い。
「ある程度の成功は確信していましたが、今年の産駒の成績如何では、逆輸出することになっていたかも知れません」と中西場長。ヨハネスブルグは本邦輸入直後から産駒の好成績により海外からのオファーがかなりあったらしく、現在でも南半球(アルゼンチン)からはシャトル種牡馬としてレンタルさせてほしいとの要望があるという。
「種付けそのものはタフな馬ですから苦にしませんし、いずれはそうなるでしょうね。とにかく、期待以上の活躍でして、今や人気度ではナンバーワンの座についています」
昨年までは(正確に言うと今年のシーズンまでは)エンパイアメーカーがダントツの人気ぶりで、配合申し込みもこの馬に集中していたのが、来年からはヨハネスとの「二枚看板」となる。幸い、種付け料も来年度は据え置かれることになり、「これが日高の“お助けボーイ”になってくれると良いですね」と中西場長も期待を寄せる。
今や人気度ナンバーワンの座についているヨハネスブルグ
種付け料の捻出は生産者にとって常に頭を悩まされる問題だ。30万円、50万円で済むのならばそれに越したことはないが、今度は販売時に価格が抑えられる。反対に、300万円、400万円という価格になると、いかにもリスクが高い。150万円という設定は、これだけ評価が急上昇した種牡馬としては異例の安さで、700頭もの申し込みがあったのも頷ける。
最終的に何頭が「合格」するかまだ分からないが、来年ヨハネスブルグの配合権利を獲得できた繁殖牝馬は、おそらく錚々たる陣容となろう。「初年度とは比較にならないくらいのハイレベルな繁殖牝馬のリストになるはずです」(中西場長)
惜しむらくは来年、再来年にデビューする産駒数が著しく少ないこと。何とももったいないと思うばかりだ。