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盛況のうちに終わったセプテンバーセール

  • 2023年09月27日(水) 18時00分

サマーセールに続き空前の売れ行きを見せた


 9月19日〜21日の3日間にわたり、新ひだか町静内の北海道市場で開催された「セプテンバーセール」は、532頭が上場され、402頭が落札、総額21億300万円(税抜き、以下同)を売り上げた。売却率は75.56%と前年よりやや減少したものの、落札馬1頭当たりの平均価格は523万1343円で前年よりも62万7227円増加し、中間価格も400万円と20万円上昇した。ともに同市場としては過去最高の数字であった。ついでながら記すと、この数字は4〜5年前のサマーセールの水準と同等である。

 サマーセールから1ヵ月。過去に例のない酷暑の下でのセリになったサマーセールと比較すると、ようやく本来の北海道らしい気候へと季節が移ろい、セプテンバーセールの3日間は、あいにくの雨(19日、21日)にも祟られて、涼しいを通り越し、むしろ寒く感じるほどの気温で推移した。

 上場頭数の多さゆえに、連日、午後8時までかかっていたサマーセールとは異なり、セプテンバーセールは、初日181頭、2日目178頭、3日目173頭とかなり余裕のある上場頭数になったことから、正午に開始されたセリが午後5時前後には終了するという理想的なスケジュールで、販売者、購買者の双方にとっても負担がそれだけ軽減されたことは大きな利点であった。

生産地便り

▲最高価格で落札されたヒシストーミイの2022


 3日間を通じての最高価格は、初日に登場した47番ヒシストーミイの2022(牡栗毛、父スワーヴリチャード、母の父Stormy Atlantic)の2750万円(落札価格2500万円)。販売者・若林順一氏、飼養者・(株)Blooming Farm、落札者・(株)キャピタル・システム。

生産地便り

▲牝馬最高価格となったマルモセーラの2022


 また牝馬では、やはり初日に登場した75番マルモセーラの2022(鹿毛、父リアルスティール、母の父クロフネ)の1815万円(落札価格1650万円)が最高価格馬であった。販売者、飼養者は(株)オカモトファーム、落札者は(株)レッドマジック。

 これで5月のトレーニングセールを皮切りに7月のセレクションセール、8月のサマーセール、そして今回のセプテンバーセールとHBA日高軽種馬農業協同組合主催の4市場を終えたことになるが、すでにセプテンバーセール2日目の時点で、同組合主催の昨年の全市場の売り上げ(150億1430万円)を上回っており、セプテンバーセール3日分を加算した現時点での総額は158億6460万円となっている。

 これに来月開催予定のオータムセール分が加わることになるので、昨年の実績を踏まえれば11億円〜12億円がプラスされると推定され、最終的には169億〜170億円あたりの総売り上げが見込めそうだ。

 好結果を受けてHBA日高軽種馬農業協同組合の古川雅且組合長は

「まだまだ馬が競馬場に入るスペースがあったということですね。上場頭数がサマー、セプテンバー合わせて2000頭に達するのでどうかなと心配もしていたのですが、びっくりです。各競馬場でセール出身馬が活躍していますし、掘り出し物を見つけるべく多くの購買者にお買い求め頂けました。各地方競馬の馬主会の購買も活発でした。平均価格が上がっていますので、馬主会によってはまだ買い切れていないところもありそうです」

 と振り返り、さらに言葉を続けて

「過去2年くらいサマーとセプテンバーに上場馬を振り分けて頂くべく努力してきたのですが、それも限界に近づいてきているように思います。したがって、今、検討課題になっているのは来年のサマーとセプテンバーの日程の振り分けです。いろいろ案が出ており、例えばサマーを後ろにずらして9月上旬に2週にわたり月火水と3日間ずつ計6日間開催にしては? とか、セプテンバーセールと合体し、9月上旬に週4日ずつ計8日間の開催にする、とか。そうすると1日250頭、合計2000頭になりますので、今年のサマーとセプテンバーの合計頭数(名簿上で1426頭と585頭、計2011頭)とほぼ同数になり、何とか対応できるのではないかとも考えております」と語った。

 サマーセールに関しては、来年以降も暑さ対策を真剣に考えねばなるまい。開催時期を後ろにずらしてセプテンバーと合体する案は、気候条件から言えば致し方ないところかもしれない。ただそうなると、販売者や飼養者により多くの負担が集中してしまう恐れがありそうだが…。

 空前の売れ行きが続く市場の現状から、来年以降はさらに7月のセレクションセール、8月のサマーセールへの上場申し込みが増えることになるだろう。一方では、日高でもじわじわとサラブレッドの生産頭数が微増し続けており、今後しばらくの間、市場には多くの1歳馬が出て来ることになりそうだ。

 この市場の活況を支えている大きな要因のひとつが、好調な地方競馬である。地方競馬全国協会発表による本年度1月〜8月末までの全国の地方競馬の馬券売り上げは、計6447億5156万円。前年比100.5%で推移しており、1日平均では7億4623万円、99.8%。主催者により多少凸凹はあるものの、全体的には依然として順調である。

 いうまでもなく、これらが各競馬場の賞金、諸手当の原資になり、さらには各馬主会の補助馬購買への原資ともなる。地方競馬が好調さを維持している限り、その馬券売り上げの一部が回り回って生産地へも還元されるという構図である。

生産地便り

▲サンライズカップで勝利したパッションクライ


 セプテンバーセールの前日、9月18日の中山「セントライト記念」は同セール出身のレーベンスティールが優勝し、セールに勢いをつける形となった。またセールの中日である9月20日、門別で行われた「サンライズカップ」(1着賞金1000万円)では、昨年のサマーセール出身馬のパッションクライが制した。レーベンスティールは2090万円(落札価格1900万円)と高額だが、パッションクライは275万円(落札価格250万円)とリーズナブルで、日高の市場の多様性を象徴するような2頭の活躍と言えそうだ。

 さて、来月の「オータムセール」は10月16日、17日の両日に開催予定である。

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▲サンライズカップでの口取りの様子

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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