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POG取材近づく

  • 2014年03月19日(水) 18時00分


◆年々、各媒体の始動が早まっている印象を受けるPOG関連本の取材

 毎年春の恒例行事と化したPOG関連本の取材依頼が、私のところにも舞い込むようになった。年々、各媒体の始動が早まっている印象で、浦河でも大手の育成牧場にはすでに14日(木)に某月刊誌のカメラマンとライターが取材に訪れたと聞いた。

 いかにも早いのだが、それぞれ“都合”があり、この月刊誌は他誌に先駆けて取材申し込みをしたものと思われる。今はたいてい「合同取材」が基本になってきており、媒体ごとに各個に対応してもらえる育成牧場は例外だが、幸いこの大手牧場の場合は、比較的取材に対し理解のある育成牧場で、取材が実現したのだろう。

 しかし、普通はこういうわけには行かない。手順としては、まず日程調整が先決で、あくまでも先方の意向や都合が最優先される。育成牧場側から〇月〇日午後〇〇時にお願いします、と言われると、それに合わせて各媒体が動かなければならない。ところが、版元は東京でも取材先の大半が北海道になるので、各社とも取材要員確保に頭を悩ませることになる。

 四方八方手を尽くしてライターとカメラマンを確保できるならば良いが、しばしばカメラマンだけしか用意できなかったりする。そうなれば1人が両方の仕事を請け負って取材に向かうことになる。なかなかの負担である。

 できれば北海道在住の人間を派遣したいのがそれぞれの本音だが、何せ人員は限られており、最初からカメラマンとライターが東京から長期出張してくる媒体も複数ある。その場合はもちろん、往復の航空券や現地での移動に使用するレンタカーなどの交通費、そして連泊する宿泊費が余計にかかってしまう。できるだけコストを抑えたい媒体にとっては頭の痛いところだがやむを得ない。

 今年は来週24日(月)から取材が本格化しそうだ。手順としてはまず取材申し込みをし、あらかじめ育成牧場から推奨馬をリストアップしておいて頂く。取材する側からあれこれ注文をつけられることはできない。あくまで先方の都合が最優先なのである。

 だいたい育成牧場の規模によって推奨馬の数が決まる。規模が大きければ多頭数になり、小さければ少頭数になる。BTC周辺の育成牧場の場合は、5〜15頭程度。最大手で20頭超といったところか。

 これからは徐々に2歳馬の調教も進んでくる時期で、5月中旬には函館競馬場を会場に2歳馬トレーニングセールも予定されている。だんだんと多忙を極める中での取材となるため、ひじょうに気を使う。もちろん育成牧場にとってはあまりメリットのない取材であり、面倒で煩わしいのは間違いないわけで、その辺りが最も難しい。「取材させて頂く」のが基本姿勢になることは言うまでもない。

 過去には、行き過ぎた取材が原因で特定の牧場から「出入り禁止」になった媒体もあったし、POGに関しては一切の取材を拒否する育成牧場もある。デビュー前の2歳馬をあれこれと論評されたくないという心理もあれば、馬主や調教師の意向で取材できない育成牧場ももちろんある。そういう場合は無理強いなどできるわけもないので潔く諦めるしかない。

ボラーレ

昨年筆者が吉沢ステーブル取材時に撮影したボラーレ(写真は本文とは関係ありません)



 また取材できたとしても、撮影の際に立ちポーズをどこまで妥協するかは、もちろん牧場によってかなり異なる。極論すると「ほとんどただ静止して立っているだけ」の産地馬体検査時の写真から、カタログレベルの文句のつけようのない立ち写真まであり、千差万別である。たいていは姿勢を直して頂くことになるが、注文し過ぎると良くない。ああして下さい、こうして下さいとカメラマンがスタッフに何度も言葉をかけて姿勢の矯正をお願いするのも限度がある。もともと神経質な馬だったり、風が強くざわざわと木々が揺れたりするような条件下では、おとなしい馬でも撮影を嫌がるのが普通だから、そういう場合は大幅に妥協することになる。1頭だけに時間をかけ過ぎることができないからだ。

 普通、撮影は1時間に10頭〜12頭くらいのペースで進む。撮影が終わると、各馬の現況やセールスポイントなどについてのコメント取りになる。育成牧場の責任者に囲み取材する形だから、その場に居合わせた全員が同じ内容の話を伺い、ほぼ同一アングルの写真を使用することになる。POG関連本の中身が似通ってくるのは現状ではやむを得ないのである。

 そんな中から媒体各誌はそれぞれ個性を出して行かなければならない。しかし、抜け駆けは原則としてご法度だから、それぞれ金太郎飴のような素材の山からどの馬を取り上げどれを削るか、というような部分でしか違いを打ち出せない。

 また、実はこれが一番の悩みどころなのだが、天候により日程が大幅に変わってしまうこと。晴れた日が続くなどということはあり得ず、3月下旬〜4月上旬にかけてはどうかすると雪が降ってくることさえあるのが北海道の気候だ。そうなると再度日程調整をし直さなければならず、もともとが過密スケジュールを組んでいるので後ろにどんどんずれ込む。東京から来ているカメラマンやライターは土日に競馬場での仕事も入ってくる。一方で関連本の刊行時期は決まっており、それに合わせて校了しなければならない。胃の痛む季節なのである。

 しかし、競馬に関しては紙媒体が総じて苦戦している中でもPOG関連本(特集)の需要だけは根強いとも言われる。それだけ競馬ファンの楽しみ方が変化してきているともいえるわけだが、やや複雑な心境にもなってくる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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