お互いに切磋琢磨するノーザンファーム早来牧場と空港牧場(村本浩平)
◆クラシック制覇は初めてのノーザンファーム空港牧場のB-2厩舎
今年の日本ダービーを制したのは、ノーザンファームが生産、育成を行ったマカヒキ(牡3、栗東・友道)となった。ちなみに2着にもノーザンファームの生産育成馬であるサトノダイヤモンド(牡3、栗東・池江)が入ったが、2頭共に育成先はノーザンファーム空港牧場となる。
マカヒキを育成したのは、ノーザンファーム空港牧場のB-2厩舎。これまでクリソライト(JpnI・ジャパンダートダービー)といった活躍馬は送り出しているものの、クラシック制覇は初めてとなる。
だが、これには少なからずとも理由がある。B-2厩舎はノーザンファーム空港牧場の中では、一世代で最も馬房数の少ない厩舎であり、この3歳世代でも19頭しか管理を行っていない。それでもこの日本ダービーにはマカヒキの他にイモータル(牡3、栗東・須貝)も送り出したというのは、育成厩舎として称えられる仕事と言えるだろう。
2着のサトノダイヤモンドを育成したのは、ノーザンファーム空港牧場のR厩舎。昨年のサトノラーゼン(牡4、栗東・池江)に続き、2年連続での日本ダービー2着となった。関係者には悔しい結果だとは思うが、それでも毎年18頭しか出走を許されない舞台に人気を背負うような育成馬を送り出し、特に今年は差の無い2着となった悔しさは、今後、育成を手がけていく馬たちへ生かされていくに違いない。
昨年はノーザンファーム生産馬が1着から4着までを独占したオークスだが、今年もまた、勝ったシンハライトからチェッキーノ、ビッシュ、ジェラシーと、ノーザンファーム生産馬が上位を独占。ただ、昨年と違うのは上位4頭(ミッキークイーン、ルージュバック、クルミナル、アースライズ)が全て、ノーザンファーム空港牧場育成馬だったのに対し、今年のオークスはシンハライトとチェッキーノ、ジェラシーがノーザンファーム早来牧場の育成馬であり、ビッシュだけがノーザンファーム空港牧場育成馬となったことである。
一方、昨年の日本ダービーは、ノーザンファーム早来牧場育成馬のドゥラメンテが優勝。2着と3着がノーザンファーム空港牧場育成馬であり、オークスのリベンジを日本ダービーで晴らしたとも言える。
クラシックといった重賞レースを生産馬が勝つたび、早来牧場、空港牧場問わず、ノーザンファームの育成関係者と話をする機会があるが、その際に良く耳にするようになったのが、
「同じノーザンファーム生産馬が勝つのは嬉しいですが、できるならば早来(空港)育成馬であってもらいたいですし、勿論、自厩舎の育成馬に勝ってもらいたいと思います」
との言葉である。毎週のように重賞戦線を沸かせ、この日本ダービーにも10頭の生産育成馬を送り出している、ノーザンファームならではの贅沢な悩みとも言えそうだが、それだけ高い志で仕事をしているのは間違いない。
勿論、素晴らしい血統背景や、生産、イヤリングと段階を重ねながらの弛まぬ馬作りも大いに貢献をしているかと思うが、今、目の前にいる馬がクラシックを沸かせる馬になると思いながら仕事をしていくのは、よりレベルの高い仕事をしようという気持ちにもなるはず。しかもすぐ隣の厩舎では同じような血統背景を持つ馬が、同じ調教施設でトレーニングを行われているのだからなおさらだろう。
この春もノーザンファーム早来牧場、空港牧場でPOG取材をさせてもらったが、その高い志が反映されているような2歳馬を何頭も目にすることができた。来年の牡馬、牝馬クラシックでも多くの生産育成馬が名を連ねていそうであり、その結果を見て牧場スタッフたちは、更なる仕事のレベルアップを誓っているに違いない。