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桜花賞

  • 2009年04月13日(月) 17時45分
 着差は半馬身にとどまったものの、期待を一身に集めたブエナビスタ(父スペシャルウィーク)の完勝だった。さすがに18頭立ての桜花賞となれば、そうは後方からレースを進める策は取らないと思えたが、最初からこれまでの形を崩すつもりはなく前半は悠然と控える作戦。後方2〜3番手追走の大胆な位置取りになった。とにかく馬群の外に出すことだけが最大のテーマだった。

 4コーナーを回ってすぐ前にいたジェルミナルと交錯しかかったように見えた瞬間だけ、もしかして置かれ過ぎたのでは…と思わせたが、1番外に回ってからはそれこそ直線一気。スパート開始のムチは入ったが、抜け出しかけたレッドディザイアを射程に入れてからは、そんなに必死の差し切りではなかったかもしれない。楽々と上がり33.3秒。これでデビューしてからの5戦、すべて出走馬中の「最速上がり」を記録したことになる。

 内ラチ沿いの芝コンディションは今年、この1〜2週で急に例年以上に悪くなっていた。最初からみんな内の4〜5頭分を避けるようなコース選択になり、飛び出したヴィーヴァヴォドカを外からコウエイハートが交わす。そのヴィーヴァヴォドカも、さらに内のダノンベルベールもツーデイズノーチスも、力量うんぬん以前に今年は内枠を引いた時点でもう運がなかったのだろう。

 コース形態変更後の阪神1600mを象徴するような平均ペースの流れは、大半の馬が外を回る形になっての前後半「46.9-47.1秒」=1分34秒0。最後は11.7-11.6-11.6秒。たまたま内を引いた運のなかったグループを別にすると、1600mのスピードレースにとどまらない「総合力」が見えた可能性がある。少なくとも軽快なスピード決着ではなかった。

 2着に負けたとはいえ、レッドディザイア(父マンハッタンカフェ)はここがまだ3戦目。エルフィンS・1600mではあふれるスケールを示すと同時に、まだ反応の鈍さを思わせるシーンが目立ったが、今回は自分から動いて出ることができた。ブエナビスタには屈したものの、距離2400mに対する適性はおそらく互角、むしろ上回る可能性もある。

 今回の半馬身差は、こういう流れや、こと距離1600mでは着差以上に決定的な「差」だったが、次の2400mでは、キャリア、レース運びがもたらす明暗などを考えるとき、その差はないに等しいかもしれない。ライバルがいてこそさらに盛り上がり、またお互いにより高いレベルを求め合う理想の形は「ウオッカ=ダイワスカーレット」が示してくれたばかり。これにブエナビスタ=レッドディザイアが続いたら素晴らしい。

 ジェルミナルはまだまだ分からないが、どちらかといえば「桜花賞」タイプと思えた。今回はチューリップ賞とは違って文句なしの仕上がり。位置取りからしてほぼ能力は出し切っているだろう。こちらのレッドディザイアからの1馬身半差は小差でもない。

 ワンカラットは内を衝くものと思えたが、パトロールフィルムを見て納得。あの芝コンディションでは前回のようなイン強襲はできない。直線は少しでも外に出そうとコースを探して4着。1400mの馬ではないことを示した。さらには、実はもっと合っているのが2400mといえなくもない。人気上位馬では、サクラミモザは前回の超スローのチューリップ賞より1000m通過が2秒以上も異なる「桜花賞」の流れだから、残念ながらいきなりは対応できなかった。ダノンベルベールは最内枠を引いた時点でツキに見放されていた。と同時に、さらに8kg減の体つきは研ぎ澄まされたというより、栗東入厩のわりにだいぶ寂しく映ってしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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