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【大阪杯】阪神内回り2000mの小さな明暗を乗り越えて結果を出した2頭

  • 2024年04月01日(月) 18時00分

4歳牡馬の反撃と、大きな成長に期待


重賞レース回顧

大阪杯を制したベラジオオペラ(c)netkeiba


 現4歳世代(とくに牡馬)はあまりレベルが高くないとされたが、直前に評価の高まった2番人気のベラジオオペラ(父ロードカナロア)がようやく反撃に成功。今年、4歳以上古馬の平地GI・GIIは「大阪杯」が11戦目になるが、現4歳世代として初の1勝を挙げることに成功した。

 阪神の内回り2000mは差のつかない難しい距離であることで知られるが、上位3着馬までの着差は、2019年が「クビ、クビ」、2020年も「クビ、クビ」。不良馬場の2021年は差がついたが、2022年が「クビ、ハナ」、2023年が「ハナ、クビ」、そして今年2024年はまたまた「クビ、ハナ」だった。

 小さな明暗を乗り越えて結果を出したのは、内回り阪神2000mのコースの特徴と、おそらくハイペースにはならないだろうと積極策に出た横山和生騎手のベラジオオペラと、途中から少し行きたがったため、強気に好位まで押し上げてレースを進めた戸崎圭太騎手のローシャムパーク(父ハービンジャー)だった。

 珍しく木曜追い切りに踏み切ったベラジオオペラは、上村調教師の臨機応変の柔軟な姿勢が吉と出た。スムーズに折り合って2番手追走となった。昨年の日本ダービーは、上がり最速の33秒0で勝ったタスティエーラ(父サトノクラウン)、2着ソールオリエンス(父キタサンブラック)と同タイム。その後の順調な成長力で上回ったといえる。

 クビ差惜敗のローシャムパークは、絶好の動きを見せた調教でも気負って映るほどの気合だったが、向正面での進出は少しかかり気味に映った。それでも直線は一旦先頭。初の関西遠征で、初コース。行きたがった小さなロスを考慮すれば勝ったにも等しい内容だった。

 レース全体の流れは「60秒2-58秒0」=1分58秒2。前半スローながら、最近10年間では2位タイの決着時計であり、古馬のエース級はドバイ遠征などで不在だったが、レースレベルは少しも低くなかった。

 3着に突っ込んだ5歳牝馬ルージュエヴァイユ(父ジャスタウェイ)も惜しかった。途中から馬群の内に潜り込み、最後の直線もインから鋭く伸びて上がり最速の34秒0。それこそあと一歩だった。祖母は凱旋門賞独走のデインドリーム。ビッグレース向きの底力を受け継いでいるところを示した。やがて大仕事が可能だ。

 一方、近年の特徴的な傾向ではあるが、3戦目に皐月賞を制したソールオリエンス、4戦のキャリアで日本ダービーを勝ったタスティエーラは、秘める素質は十分すぎるほどだが、まだ未完成な状態でチャンピオンになった馬だけが受け入れなければならない厳しい道を歩むことになった。なかなかイクイノックスのようにはいかない。

 ベラジオオペラは距離適性も関係するが、菊花賞には出走していない。代わりに古馬相手のチャレンジCを勝ち、京都記念をステップに「大阪杯」に目標を絞ることができた。菊花賞→有馬記念と進んだタスティエーラ、ソールオリエンスは、それが当然の道ではあるが、残念ながら充電の再鍛錬には結びつかなかった一面があるのではないか。

 発表はないが、絶好位にいて直線11着にまで沈んだタスティエーラは、エントラップメントなどアクシデントに見舞われたのではないか。7着にとどまったソールオリエンスは、ブリンカーを装着して早めに進出する戦法を経験しておきたかった。2頭ともにこんなはずではないのは明らか。まだキャリアの浅い4歳馬、ぜひ、立て直したい。

 4歳牡馬の全体レベルが低いのではないか。ベラジオオペラの快走によって、決してそんなことはないことが半分証明されたが、かなりの評価を受けた5頭の4歳馬のうち、着順掲示板に載ったのは1頭だけ。4歳馬の反撃と、大きな成長に期待したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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