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皐月賞

  • 2009年04月20日(月) 18時00分
 注目の人気馬が、大きいどころか、著しく激しく「明暗」をわけた第一冠になった。勝ち時計はレースレコードに0.2秒しか差のない1分58秒7。レース全体の流れは『59.1-59.6』秒。前半1000m通過59.1秒は、94年の58.8秒(サクラエイコウオー)に続くハイペース。それも今年はペースメーカーの単騎先行でもないから、全体に厳しい2000mになったが、レースが壊れたほどの乱ペースではない。この結果はダービーにどう繋がるのだろう。

 圧勝したアンライバルド(父ネオユニヴァース)は、ライバルとされた2頭に決定的な差をつけた。折り合って中団追走から猛然とスパートし、4コーナーでは外を回ってあっというまに先頭に躍り出たからすごい。勝負を決める地点で示した爆発力は、ちょうどライバル2頭が失速したと同じ地点だっただけになおさら強烈。残された数字以上に鋭く、なおかつ力強かった。アンライバルドは抜群に勝負強いことが分かった。

 史上、皐月賞を1分58秒台で乗り切ったのは、02年ノーリーズンの年の上位4頭。04年ダイワメジャーと、コスモバルク。このうちダービーでも連続して快走したのは02年タニノギムレットのみ(この時期に激走すると反動もある)であること。

 あえてほかに心配な点を探せば、バレークイーンの一族(フサイチコンコルド、ボーンキング、ヴィクトリーなど)は絶頂期を迎えるのが早く、すぐにピークを過ぎがちなこと。この時期の3歳馬だから古馬と違って体調の変動は大きいが、それはみんな同じ。文句なしにダービーの最有力馬だろう。もちろん距離はまったく心配ない。

 その体調の急激な変化に大きな敗因を求めたくなるのが、1番人気ロジユニヴァース(父ネオユニヴァース)の大凡走だった。水曜日の追い切りを終えた時点では、絶好調を思わせた。衆目一致の好仕上がりのはずだったが、当日のロジユニヴァースは明らかに元気がない。落ち着いているという見方もできたが、あふれる闘志を内に秘め…という状態ではない。マイナス10kgの馬体重がどこまで変調と関係したかは分からないが、俗にいう「追い切りの時点がピーク」は明らかだった。しぼんで枯れて映った。古馬の場合はかえってこの方がいいケースもたまにあるが、3歳馬がこの状態では苦しい。

 中団より前で、リーチザクラウンをマークする位置はおそらく予定通り。懸念された大跳びのストライドが不利となるようなもまれる位置ではなかった。勝負どころの4コーナー手前、もっとも早く手ごたえを失ったのが人気のロジユニヴァース。外からアンライバルド以下の馬群に一瞬にして飲み込まれた時点で、もうあきらめざるを得なかった。

 皐月賞を大敗して巻き返した馬がいないわけではない。最近では04年ハーツクライ(橋口厩舎)が14着から、ダービー2着。99年アドマイヤベガ(武豊騎手)が、皐月賞1番人気で6着からダービー1着。しかし、1番人気で2ケタ着順からダービー馬となったのは、史上ただ1頭、遠く1961年ハクショウ(11着)だけ。巻き返したい。なんとか巻き返して欲しいが、ロジユニヴァースは非常に苦しい立場に陥ってしまった。

 リーチザクラウンもなんと13着。失速した場合は5着も13着もさして関係ないのがレースだが、猛ペースで競りつつ逃げたゴールデンチケットにも負けてしまった。少し気負いがあった程度で、素晴らしい仕上がりに見えた。体つきと存在感は他を圧してもいた。心配された輸送での馬体重減もまったくなし。外枠だから相手の出方に合わせ途中からペースアップの形も取れる。この馬にとっては理想の枠順と思えたが、ハイペースを演出した伏兵陣の先行を我慢して見る立場(戦い方)に立てなかった。

 つっかかり気味に自分も先行争いに参加せざるをえないのだから、やがては折り合い自在のタイプに成長するとしても、この気性ではダービーでは「強引に行くしかない」かもしれない。折り合いうんぬんではなく、完成されるまで緩急のペースをこなすのが難しい一本調子型(母父シアトルスルーの影響)を否定できなくなったことだけは確かである。

 しんがりから2着に突っ込んだトライアンフマーチ(母キョウエイマーチ)、同じように控える形から3着に押し上げたセイウンワンダーは、レースの流れが味方したのは事実でも、この好走、善戦の自信はダービーに結びつく。とくに初めて強敵と対戦したトライアンフマーチは、注目の血統馬ながらどうみてもまだ良化途上の幼ささえ感じさせる体つき。あと1か月半、さらに大幅に良くなる可能性がある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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