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天皇賞・春

  • 2009年05月04日(月) 17時55分
 伏兵12番人気の6歳馬マイネルキッツ(父チーフベアハート)の大逆転だった。なんとこれが初の重賞制覇。しかも、勝ち時計の3分14秒4は97年のマヤノトップガンと並ぶ史上3位の快時計。近年の芝コンディションの格段の良化を考慮しても、とてもたまたまの大駆けで乗り切れる内容ではない。

 長距離に出走したのは前回の日経賞2着が初めてだったが、秘めるスタミナ能力が今春の路線変更で大きく開花したといえる。この路線変更には松岡騎手の進言があったといわれる。今回はゴールデンウィーク中の輸送がもたらすマイナスも考慮し、早めに栗東へ入厩していた国枝調教師のフットワークの軽い手法も見事だった。マイネルキッツの最近の好走は平坦に近いコースに集中してもいたから、初コースとはいえ直線平坦の京都も抜群に合っていたのだろう。

 先頭は目まぐるしく入れ替わったが、このことによってレース全体の流れは中盤に少し息の入る「13.0秒」のハロンラップが2回あっただけ。前後半の1600mずつが「1分37秒0=1分37秒4」という緩みない流れになった。位置取りに注文をつけたグループにとっては息の入れどころが難しく、またスパートのタイミングも難しくなった。

 マイネルキッツ以下、今回の天皇賞・春で上位に食い込んだグループは内容の厳しいレースだっただけに、みんな必ずしも信頼性の高い馬ではないが、秘める能力はあるという視点ではこのあとも強気になれる。

 惜敗の5歳アルナスラインは巧みに中位(マイネルキッツとほぼ同位置)でレースの流れに乗り、一歩早くスパートしたマイネルキッツを見て進出。勝ったにも等しい内容だったが、同じようにスパートした勝ち馬にインから抜け出されてしまった。能力はフルに出し切っている(レース中に落鉄の不利があったとされる)。以前は大きな体を持て余し、好走すると自分自身の体がもたらす反動が大きかったが、もう完全に本格化だろう。

 3着に押し上げたドリームジャーニーとともに07年の菊花賞で上位に食い込んだこの5歳馬2頭は、勢力図全体の中で占める位置を順当に示したともいえる。ピッチ走法の切れ味が身上のドリームジャーニーに3200mは長いのではないかと思えたが、たしかに総合力アップ。寸前で鈍ったとはいえこれは価値ある3着だった。

 その07年の菊花賞の勝ち馬で人気の中心アサクサキングスは、緩みない流れでかつペースの上がったところでスパートせざるを得ない、不器用な脚質の人気馬の弱みが出た。と同時に、不良に近い重馬場で3分13秒台(通常より5秒は時計を要した)の阪神大賞典組が、スクリーンヒーロー、ヒカルカザブエなどみんな凡走に終わったことを考えると、思われていたよりはるかに阪神大賞典の疲れは大きかったのだろう。とくにスクリーンヒーローは、馬体重こそさして変化はなかったが、輸送する前からトモがさびしく映った。

 大駆けを期待したネヴァブションは、意識的に体を絞ったと考えていたが、なんとなく元気がなかったあたり、凡走の日経賞から体調を回復させることができなかったのかもしれない。先行しての一応の形作りだけに終わってしまった。

 4歳モンテクリスエスは快レコードのダイヤモンドSの内容から好勝負必至と思えたが、だんだん体つきが変化してきた。松田国調教師の手がける馬らしくパワーみなぎる体型にかわり、今回はやけに体が硬く映った。後方追走のままにとどまるような馬ではなく、次走の巻き返しに注目したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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