大きな期待を集めたドバイデューティフリーの結果があまりに物足りなかったため、「この相手なら…」とは言いつつも、5歳になっての心身の微妙な変化に小さな懐疑さえ思わせたウオッカ(父タニノギムレット)だったが、昨年の安田記念圧勝時よりもっと強烈な内容で東京の1600mを独走してみせた。楽々と好位置につけ、最後は7馬身差。余力を残して1分32秒4。
研ぎ澄まされた体つきがちょっと丸みを感じさせるシルエットになり、デビュー以来の最高馬体重と並ぶ494kg。今回は負けられない。そういう仕上げ過程だったが、逆にウオッカ自身にはドバイから帰って安心の、落ち着いた調整だったのだろう。
ドバイから帰国直後は、納得のいかない敗走に、海外のビッグレースへの改めての挑戦も匂わせていた陣営だが、どうやら現役は今年いっぱい。国内の秋のビッグレースを目標にするらしい。
ウオッカが牝馬でなければ、またオーナーがオーナーブリーダーでなかったとしたら、レベルが上がったと言いつつ実はここ2〜3年、海外ではまったく勝てず再び停滞期に入っているのではないか、世界のトップと離されているのではないかとされる日本のOP馬。ウオッカ級には日本国内にとどまることなく、改めてより強い相手との対戦を望み、ビッグレースへの挑戦姿勢を掲げて欲しかったところだが、大切な牝馬とあっては仕方がない。
ウオッカも、そしてダイワスカーレットも、さらにはディープインパクトも、近年の日本を代表するサラブレッドの果たすべき大きな役割、使命は次の世代の発展に持ち越されることになった。
レースの中身は「46.7-45.7秒」=1分32秒4。日本ダービーのスローな流れを上がり3F33.0秒で独走したウオッカにとって、距離こそ違っても、もっとも爆発力の発揮できる流れだった。今回もスパートした地点の1Fで楽々と「10.8秒」を記録している。負担の少ない徐々にペースアップの形だったから、快時計で乗り切った反動は最小限にとどまるだろう。今度はディープスカイなどの待つ「安田記念」に出走することになる。
7馬身も離されてしまった2着以下は、こういう流れになると先週のNHKマイルCで凡走に終わった差しタイプが示したようにまったくいいところなしの内容になる。当面の相手と思われたリトルアマポーラ、カワカミプリンセスなど、1分33秒9で入着するのが精いっぱい。記録面では条件級にも及ばない数字が残ってしまった。ともにスローの流れを読み3コーナー過ぎでは勝ったウオッカからさして差のない位置に取りついてはいたが、徐々にピッチの上がるレースに対応できなかった。
とくに立ち直り気配の6歳カワカミプリンセスは、久しぶりに好状態と見えたが、距離うんぬんではなく、こういう正攻法に近いレースは合わないのだろうか。スパートしかかったところでレースのピッチ自体も上がるから息が入らず、かつ目標のウオッカには一気に離されてしまった。
中で、2着した伏兵ブラボーデイジーは立派。距離も、コースも、乗っていた生野騎手のGI挑戦も初めて。スローで先行できたから粘り込めたという内容ではない。勝負どころでひと息入れて下げ、粘るショウナンラノビアを差す形になった。まだ4歳。今回は恵まれた部分が大きかったにしても、急上昇ぶりが光った。
マイペースで逃げたショウナンラノビアも格上がりで東京の芝コースは初めて。これからの季節向きのフレンチデピュティ産駒。もう少し上がりがかかるとさらに粘りを増しそうだ。
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