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エプソムC

  • 2009年06月15日(月) 23時50分
 シンゲン(父ホワイトマズル)が1分45秒5の好時計で快勝し、今年6歳になっての充実が本物であることを示した。チャカついてイレ込み気味になるのはいつものこと。それでもこれまでよりはずっと軽度で、夏のような気候だったからマイナス10kgの馬体重も細くは映らなかった。もっとも心配されたのは前回の新潟大賞典2000mを1分56秒9の速すぎる時計で走ったあとの目に見えない反動だったが、もう体質は強化されたのだろう。まったく堪えた様子はなかった。

 陣営は、このエプソムCで期待通りの結果が出るようなら「天皇賞・秋…ジャパンCと続く秋のビッグレースに挑戦したい」としていたが、今回の勝ち方なら十分にその資格ありと思える。ホワイトマズル産駒の中距離タイプの中では、母方の影響もあって「スピード能力」を前面に出してきたのがこの馬の最大の長所。アサクサキングス、イングランディーレ、シャドウゲイトなどより全体にかなりシャープな体つきで、かつ、追っての味がある。あまり間隔を詰めて出走させない方がこれまでも結果を残していることと、コンビの藤田騎手が札幌に遠征するのが例年のパターンなので、8月23日の「札幌記念」をステップに秋のビッグレースに向かう可能性が高い。

 6歳とはいえまだキャリア14戦[8-1-0-5]。途中に骨折休養のブランクもあって、いま本物になったばかり。遅まきながら…というより、隠れた素質馬にいよいよトップに挑戦の機会が訪れた。そういう期待をしたい。シーズン末のGIII重賞は年によっては春の「残念会」ムードのケースも珍しくないが、今年の場合は、マッチレースになったヒカルオオゾラとともに確実に秋につながりそうである。

 そのヒカルオオゾラ(父マンハッタンカフェ)は、昨年に続きまたこのレース2着。早め先頭のレース運びも、走破時計もほとんど同じような結果になってしまった。先頭のショウナンラノビアから馬体を離しつつ外に回ったが、それでもちょっと行きたがっていた。本当はもう少し我慢したかったのだろうが、この馬、伸び伸び走れる東京コースになるとふだんよりずっと行きっぷりが良くなり過ぎてしまう。とはいえ、こちらもまだキャリア11戦[5-3-0-3]の5歳馬。あと一歩で重賞に手が届くところまできている。一段とのびのび見せるようになったスケールあふれる体つきは印象的で、まだまだ良くなること必至。ローカル重賞ならすぐにも勝てそうだ。

 キャプテンベガ(父サンデーサイレンス)は、高速決着必至の馬場状態を考え、人気の中心ヒカルオオゾラをマークする形で今回は珍しく好位追走。これまでにない自在性あるレース運びを見せたが、いざ追い出してからは上位2頭とかなり能力の開きがあった。最後はシンゲンからは3馬身以上の差。直前のマイル戦で1分33秒0を記録するなど侮りがたい上昇を示していたが、今回は正直「力負け」だろう。

 このあとの夏競馬をにらんでの視点では、もともと良く見せすぎる体つきとはいえメイショウレガーロ(5歳、父マンハッタンカフェ)に要注意。今回はもまれてジリ下りの結果だったが、そのわりに大バテしなかった。10着だった4歳アーネストリーは、クラス移動になる次走はおそらく断然人気。でも確勝級だろう。6歳ミストラルクルーズはまだ今回は少し緩く映ったから、次の福島の七夕賞(昨年2着)では侮れない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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