スマートフォン版へ

マーメイドS

  • 2009年06月22日(月) 13時50分
 また今年も「軽ハンデ馬」同士の決着。これでハンデ戦になった2006年以降、1〜2着した計8頭はすべて「48〜54kg」の軽ハンデの馬ばかりとなった。もちろん結果は、波乱の連続。GIIIのハンデ重賞で牝馬限定とあれば難しい結果など当然。それこそ多くのファンが納得するところだが、それにしても不思議な重賞に育ちつつある。

 だいたい最初から波乱の要素は揃っている。関西では前半戦のシーズン末になり、これでしばらく夏の休養に入る馬も多い。トップグループが春の目標としていたGI・ヴィクトリアマイルなど、もうとっくに終了している。だからハンデの重いグループはみんな春一連の成績がかんばしくなく、物足りなかった馬ばかり。

 この梅雨どきの阪神コースは馬場状態の変化が激しい。そのうえレースの流れが結果に大きく左右する内回り2000m。これから調子を上げてくる夏馬もいる。前半戦の最後とあって強気に格下から挑戦の好調馬も珍しくない……など。

 しかし、今年は心配された馬場状態は「良馬場」。人気のベッラレイア、リトルアマポーラの死角は少なくなったように思えた。まして2頭ともに調子下降になるようなローテーションでもない。この2頭、結果は4、3着だから大きく崩れたわけではないが、それは残る記録の上でのことで、着差以上の完敗だった。勝ち負けに加わったシーンはどこにもなく、終わってみたら一応3着と4着だったという着順である。

 レースの流れは前後半の1000mずつが「60.3-59.9秒」。それなりのポジションにいたならどの馬にも不満のない流れだったが、考えるまでもなくこれは鮮やかに逃げきった伏兵コスモプラチナの刻んだ数字であり、離れた2番手がレッドアゲート、さらに離れた3番手がニシノブルームーン以下だった。残念ながら人気のベッラレイアの前半1000m通過は推定61.5秒前後になる。

 内回り2000mの良馬場で、結果2分00秒2が勝ちタイムだったことからすると、ちょっと大事に構えすぎたかもしれない。しかし、無理のない位置で楽に追走していたから秋山騎手のタメ過ぎや大事に乗り過ぎたという結果ではない。明らかに以前ほど鋭く「切れ」なくなっているのだろう。ゴール寸前はもう止まっていた。

 昨年に続き1番人気での凡走。こんなはずではない…の支持を集めるナリタトップロードの数少ない代表産駒は、非常に残念なことだが、しだいに評価が下がりつつある。今後は父と同じようにもっと強気に早めにスパート、そんな作戦もひとつの手だろう。

 ハンデ頭のリトルアマポーラは持ち味発揮を考えるとそうは前に位置することもできず、ベッラレイアを射程に入れつつの中団。したがって同馬の1000m通過は62秒前後になる。上位ではただ1頭、上がり3F34秒台を記録したが、いわゆるGIホースとすると物足りない結果だった。

 しかし近年、牝馬にトップホースが揃いすぎたため、「GI勝ち馬」となるとどうしても高く評価されがちだが、これは決してリトルアマポーラが悪いわけではなく、だいたいはふつうこの程度のランクであり、たまに台頭するのが一般的な牝馬GI勝ち馬であってまったく不思議ない、ともいえる。

 一方、鮮やかに逃げ切ったコスモプラチナは、平坦の新潟とはいえこの距離に1分58秒1で圧勝の記録をもつ馬。今回は休み明けとあって評価は低くなったが、ずっと単騎マイペース。あまり引きつけては良くない馬だが、和田騎手は絶妙のマイペースから、3〜4コーナーでも他馬に接近させなかった。前後半のペースバランスといい会心の重賞制覇だろう。

 最近の和田騎手は人気薄の逃げ=先行型に乗るとペース判断が実に的確。それを活かしての快走が多い。コスモプラチナの父ステイゴールドはさまざまな渋い産駒を送り続けるが、こういう全体に少し時計のかかるシーズン末の馬場はことのほか合っている。人気のザレマは力強い馬体で状態万全と映ったが、最近、スピード系のわりに素軽くなくなっている。でも、このファミリーは距離は延びない方がいいのだから、一段と難しい馬になりつつある。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング