スマートフォン版へ

ラジオNIKKEI賞

  • 2009年07月06日(月) 17時50分
 ハンデ戦になって今年で4年。06年には54kgのソングオブウインドが2着。07年は52kgロックドゥカンブが勝ち、54kgスクリーンヒーローが2着するなど、実績なしの軽ハンデ馬が飛躍のきっかけをつかむ出世レースになる一方、春一連の重賞で好走したグループの出走は少なくなった。

 今年は、前回1600mの1000万特別を勝ったストロングガルーダが中位から差し切りを決め、前々走1600mの500万条件を勝ったばかりのサニーサンデーが一旦先頭の2着。すでにクラス分けは「3歳以上〜」になっている中での「3歳限定のハンデ戦」。今後もメンバーの大半を占めるのは1000万条件馬(2勝馬)となるだろう。

 古馬の場合と異なって、大半がこれからの馬だから、ハンデがおおよその力関係を示すバロメータとはなりえない。絶えず、結果としてかなりハンデに恵まれた馬も、56〜57kgの重いハンデが妥当ではなかった馬が出現することになる。4年間でもっとも低配当の3連単が06年の95,770円。難しいことこの上ないハンデ重賞は、小回り福島ゆえの馬場状態(枠順)の有利不利まで伴っている。

 ストロングガルーダはあまり道中の行き脚は良く映らなかったが、ずっとハロン12秒前後の一定ペース連続の流れ。小回りコースのこういう流れで、求められたのは1600m前後をベストとするスピード能力だったのだろう。1400mを1分21秒台、マイルを1分34秒台で乗り切れるスピードがフルに活きた。ずっと外々を回されることになったが、これも結果として芝のいい部分を通ったことになり、最後の伸びにつながった。これで6戦4勝。体型、及び母方の特徴から1600m前後向きと判断している陣営は、秋は菊花賞路線ではなく、マイル路線に向かうとしている。

 2着サニーサンデーもここまでの2勝は1600m。1000m通過60.1秒の平均ペースの流れに、なだめるように好位で巧みに乗り、4コーナーを回って先頭。あと一歩で押し切れるところだった。もしこれが内枠だったらもまれる危険も、芝状態の悪い部分を通らざるを得ないマイナスもあったはずで、外の15番枠が味方した。前回2000mのプリンシパルSを17着の大敗。だから53kgのハンデは当然。しかし、今年のこの重賞はあくまで結果としてだが、求められたのは1600mを1分34秒台で乗り切れるぐらいのスピード能力だったから、結果、ハンデの利は大きかった。

 人気のイネオレオは前回接戦のイコピコ57kgより2kg軽くなった55kg。左回りのコーナーでもたついていただけに今回のハンデは有利と映り、また外を引いた枠順の利もあったが、右回りの今回もまたコーナーでの手前の変え方があまりスムーズではないように見えた。かなり不器用なのだろう。1〜2着馬が1600m以下に良績があったのに対し、イネオレオは1600mの経験なし。求められた適性の違うレースだったかもしれない。

 イコピコはOP特別を勝っているからトップハンデの57kg。これは仕方がない。いくらも負けていないからこの相手なら総合力No.1としていいが、イネオレオと同様に必ずしもスピードレース向きではない死角が出た。馬場は良くなかったが、そのためみんな大事に乗った結果、平坦重賞らしい軽いレースの部分が大きかった。

 ストロングリターンは一度下げて、3〜4コーナーの勝負どころで外に回ると力強く伸びてきた。芝状態を考えた内田博幸騎手の苦心のレース運びだった。それでこの着差なら、もし外枠だったら……だろう。とくにこの週は芝の内枠を引いて好走した馬はほとんど見当たらず、どのレースも断然「外枠の馬有利」だったのだから。

 その大きく明暗を分けることになった今年の「福島の芝」。もともと福島は春と夏と、秋にも開催が組まれることが多いから、芝の育成にもっとも苦心するのがJRAの中では福島であることは知られている。まして、微妙な地理(気候条件)も、もともとの土壌も良くないことも重なり、ファンも馬場を管理する側もいつも芝状態に悩まされるのが福島だった。

 今回のエクイターフの張り替え部分を増やした馬場整備作戦は、肝心なときに天候に恵まれず、また余計なときに雨にたたられたり、結果、これだけ内外の差が生じてしまったから、一応は(今年は)失敗に近いかもしれない。でも、福島競馬をささえるファンは開催の後半に1-1が出たりしたら、それこそ場当たりな人為的な(ローラーによる)馬場整備を激しく非難してきた。使えば芝が荒れるのは当然。雨が降れば、内より外が伸びるのも自然がもたらす当然の成り行きと受け入れてきた。また今後、状況に変化されにくい福島地方に合った芝の開発、発見にさらに時間がかかってもそれは仕方がないのである。

 芝はレースが行われれば痛む。問題はその痛み方の程度であることもみんな理解している。だから、今週いきなりローラーで固めて「内枠」有利に転じたりの修正がない限り、今季の馬場は今季の芝で、急にそんなに嘆いても仕方がないだろう。幸い故障した馬は少ない。だから決して悪い馬場ではないともいえる側面もある。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング