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七夕賞

  • 2009年07月13日(月) 17時50分
 伝統のハンデ戦らしい大接戦に持ち込まれ、勝ったミヤビランベリから7着シャドウゲイトまでわずか0.3秒差。直線はまだみんな脚があったため、短い直線で接触し、ぶつかりそうになるシーンが何箇所も生じる激戦だった。

 大半の出走馬がコース選択、あるいはスパートのタイミングひとつでチャンスありと読んだのだろう。伏兵ドリームフライト、ナイアガラなどが先手を取ったが、1000m通過61.1秒のスローペースで流れ、向正面から勝負どころの3コーナーにさしかかるあたりで各馬ほとんど一団。大半の馬が最後は外に回りたかったため、4コーナーでは外に振られる形になった馬、前が詰まって進路変更を余儀なくされた馬がいた。逆に前がポッカリ開いた馬もいる。悔いの残る陣営も多かっただろうが、小回りコースでスローペースのハンデ戦、まして内側は荒れている。仕方がないところもある。

 そんな中にあって勝ったミヤビランベリは最初から好位の外。目黒記念を快勝しているぐらいだから、軽ハンデで逃げ切った昨年とは違って自信満々、正攻法でレースを進めることができた。終始外を回りつつ自身でコースを選んでいる。したがって不利もなかった。着差こそ少ないが、もうローカル向きの平坦巧者にとどまらない。目黒記念が示すように重馬場は鬼。さらに今回は57kgを背負って上がりの速いレースにも対応できた。57kgで勝ってしまったためサマー2000シリーズのチャンピオンを狙うには、このあとは、強力メンバーが予測される「札幌記念」に挑戦してポイント加算に出ることになるだろうが、昨年よりサマーチャンピオンに輝く可能性は高いように思える。もう、とてもハルウララと「いとこ同士」などとは言えなくなった。

 ゴール寸前、割って伸びてきた牝馬アルコセニョーラの2着も素晴らしい。いかに福島や新潟を得意とする平坦巧者とはいえ、新潟記念を1分57秒5(上がり3F33.7秒)で突き抜けたかと思えば、1800m1分54秒0も要した泥田のような福島牝馬Sでも2着。今回は4コーナーでうまく前が開いたとはいえ、男馬相手にこじあけるように伸びている。今回がハンデ53kgだから、夏の新潟記念もハンデは重くなりようがない。好調をキープできるなら連覇の可能性さえ出てきた。

 小差3着ホッコーパドゥシャは好位の外に付けたかったが、スタート直後の行き脚もう一歩。流れに乗り遅れてしまった。この日、内田博幸騎手は4勝もして勝ち過ぎていたから、さすがにもうメインのころは幸運の女神も味方しなかったのかもしれない。決してスムーズに追走、追撃できたわけではないが、着差は0.1秒だけ。7歳馬ながらまだ馬体は若い。同じようなコース形態の小倉コースに勝ち星があり、8月2日の「小倉記念=2000m」に出走してくるようならチャンス十分だろう。

 4着トウショウシロッコはいきなりマイナス24kg。同じような馬体重で好走したこともあり、とくに細いとは映らなかったが、かかり気味の追走で、4コーナーではちょっと強引に外に回るなど決してスムーズなレース運びではなかった。引いた枠順、ローテーションなどの不利を考えると、負けても評価は下がらない。デストラメンテは3〜4コーナーで挟まれて引く形になったロスが大きかった。まだまだ脚はあっただけに、この馬は次走要注意。新潟の適性もある。グラスボンバーは、一瞬、かつての七夕賞でただ1頭だけインを通る奇襲に出て勝ったビゼンセイリュウ(故蛯沢騎手)の再現を思わせた。もう少しで最終日の福島だからありえるファインプレー成立かと思えたが、残念なことに、9歳グラスボンバーは衰えていた。ハンデ頭のシャドウゲイトは4コーナーで外に振られる不利があったが、脚質からしてこのコースでこのスローなのだから本当はもっと前に位置したかったろう。4コーナー先頭ぐらいの強気な積極策だったら、ああいう不利は受けなかった。あの位置にいた時点で残念ながらどのみち勝利はなかった気がする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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