5歳牝馬カノヤザクラ(父サクラバクシンオー)が昨年以上の完勝で2連覇を達成し、2年連続のサマースプリントチャンピオンに向けて断然有利な立場に立った。昨年は同じ橋口厩舎のスリープレスナイトと出走レースを振り分ける形になったが、今年はセントウルSまで待たなくとも、相手とハンデしだいで8月16日の「北九州記念(1200m)」に出走することができる。サマー2000シリーズのミヤビランベリも同じ印象を与えたように、夏のサマーシリーズを狙っているグループはタフでたくましい。
土曜日から予測を上回る降雨量を記録し新潟では珍しい「重馬場」。カノヤザクラは昨年が54秒2の勝ちタイムだったが、今年は「2.0秒」も時計がかかって56秒2。再び有利な大外を引き当てた幸運があったとはいえ、1000mで2.0秒も時計差の生じたレースを制したのだから、今年の方がより強さを感じさせた。
夏のスプリントシリーズでの「牝馬大活躍」は知れ渡っている。小回り平坦コースが中心であること。このカノヤザクラのようにカリカリしてイレ込みやすい牝馬に当日輸送なしが大きいこと。さらには牝馬のタフな一面(生命体として)も大きいのだろうが、この新潟の1000mでは距離が距離の接戦だけに「牝馬2kg減」の設定が、考えられる以上に大きな要素のように思える。今年も上位に牝馬の健闘が光った。
2着に突っ込んだアポロドルチェは、昨年は最内の1番枠から出て勝ったカノヤザクラ(昨年は18番)とわずか0.1秒差。今年は一転して自分も外の18番。
しかし、各馬ともにできるだけ外へ…と動くのがいつものことだから、差す形のアポロドルチェには必ずしも有利な大外ではないかとも考えられたが、重馬場のためみんな進路変更に出る余裕などなかったのだろうか。それともどこを通っても同じことと判断したのか、不思議なことに今回は外に寄ってくる馬がほとんどいなかった。残り200mあたり、アポロドルチェの前方、外ラチ沿いが一番ガラッと空いていた。最後に外の利がフルに生きた。
上位8着までに入線したのは、すべて外枠を引いてそのまま真っ直ぐ馬場の外寄りを通ってきた馬ばかり。新潟の直線1000mは創設されてすぐ、能力差の大きい未勝利や500万下はともかく、外ラチ近く(他の距離のレースでは通る馬はいない)を目ざして斜めに進路をとる馬「圧倒的有利」がパターン化しているが、重賞レースで「17、18、12、16、14、13、9、15…」番の入線では、さすがにちょっと興醒め、枠順(しだい)競馬の物足りなさが前面に出過ぎてしまったといえるだろう。先週の「七夕賞」のように開催の後半で芝が傷んでは、それは仕方がない。あれはみんな納得せざるをえない。
でも、アイビスサマーダッシュは夏の開催の第1週である。せっかくの日本でただひとつの「直線競馬」をもっと興味あるレースにして、さらには世界のスプリントレースに挑戦したとき、せめて入着や善戦ぐらいは期待していい馬を育てる役割の一旦を担うとしたら、ときどきは芝の張り替えにとどまらない、文字通り「根底からの馬場整備手段」が必要だろう。直線競馬と共用する部分だけでいい。
寸前で失速したアルティマトゥーレは5歳とはいえ、キャリアも浅く最後に厳しいレースの経験不足が出た。3歳エイシンタイガーも素晴らしい状態に見えたが、こちらは案外、そう成長するタイプではないのではないかと思わせた。大駆けに期待したクールシャローンは7着止まり。直線1000mにもう少し適性ありと考えたが、ダッシュはともかく肝心の中間地点で楽をすることができなかった。