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函館記念

  • 2009年07月27日(月) 18時00分
 GIIIのハンデ重賞とあってベテランの多い組み合わせ。同じベテランホースといっても、すでに全盛期を過ぎ多少とも陰りをみせる馬もいれば、遅まきながらやっといま完成期の奥手タイプがいる。勝った7歳サクラオリオン(父エルコンドルパサー)は、やっと本物になって初重賞を制したのが今年3月の「中京記念」だった。3〜4歳時は体質も弱く故障したため、わずか7戦しただけ(1勝)。そのあとも急速に良化したわけではなく完成には時間がかかったが、7歳になってからの重賞2勝はきわめて希なケースである。まだ「手前の変え方がスムーズではない」という。このあとはサマー2000の得点加算もあって、トップホースのそろう「札幌記念」を予定している。札幌の芝[2-1-1-0]。とくに2000mは2戦2勝。どこまで通用するか楽しみな7歳の上がり馬が出現した。

 うまく「手前を変えてくれない」といいながら、今回の快勝は秋山騎手の好騎乗がとくに光った。外の16番枠から2コーナーを回るあたりで早くもインにもぐりこみコースロスなくスルスル内から進出。直線だけこじあけるように外に出てきた。今春の中京記念が初騎乗で、これで4戦[2-1-0-1]。よほど手が合うのだろう。

 最ベテランの8歳馬マヤノライジンは先行馬の直後につけてスパートのタイミングを計り、1000m通過60.8秒のスローだったから3コーナー過ぎから一気に進出。ゴール寸前もう一回伸びて逃げるメイショウレガーロをかわした。なんと2000mで連対したのは8歳の夏にして初めて。これは巧みに好位置に取りつき、流れを読んで一気にスパートした札幌リーディング(今開催21勝)の藤田騎手の手腕によるところが大きく、たしかに今回のデキは素晴らしかったが、いかにも夏のハンデ重賞らしい伏兵の台頭で、だからこのあと…という内容ではないと思える。

 むしろ、このマヤノライジンに苦もなくひねられてしまったほかの注目馬のレース内容は、かなりがっかりするものだった。1番人気の4歳マイネルチャールズは、スローな流れの先団にいながら終わってみれば12着。脚部不安で9か月ぶり、もともと使って良化型、充実の体つきというより変に良く見せすぎた馬体など、明らかに完調ではなかったが、「それでもさすがにこの相手なら…」の期待が1番人気の理由だった。どうしてもあと一歩が足りなかったのが3歳時。脚部難を契機に立て直しを図り、体つきはたしかにたくましく成長したようにみせたが、ひょっとすると細身に映った3歳時の馬体の方がむしろ動ける体つきではないのか? 使えば大きく変わってくれるのか? 戦法を大きく変えた方がいいのではないか? など、3歳春は大きく期待したわたしも、この馬の今後は正直わからない。ただ、今回はさすがに人気になりすぎだろう。

 同じ4歳レジネッタ(桜花賞馬)も、この夏から秋に備え立て直しを計ってきた。今回は再出発にふさわしい契機にしたい1戦で、スランプに陥っていた昨秋や、まだ体調一歩だった春とは変わってくれるはずだったが、とくに見せ場なし。昨年の夏、クイーンSを2着した時よりレース内容には見るべきところがなかった。GI牝馬のこういう長いスランプは、キストゥヘヴンが示したように、時間が経てば復活することもあるだけに対応が難しい。次走を予感させる見せ場を作ってくれたあとでいいのだろう。本当に復活なれば、たった1度だけ好走してくれるわけでもないのだから。

 7歳インティライミは好気合を示していたが、馬体重は変わりなくとも変に体が小さくなったように映ったから、不振は深刻かも知れない。衰えたとは思いたくない渋いタイプだが、年こそ違え、マイネルチャールズと同じで「さすがにこの相手なら…」という発想は正解とは遠いのだろう。6歳ゼンノグッドウッドはスタートに失敗。出遅れてしまった。上がり34.6秒はメンバー中No.1だったが、あの後方からでは当然の数字で、伏兵の挑戦者らしくサクラオリオンのように自分から動きたかったが、そう自在性のあるタイプでもないから仕方がない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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