「ハナ、クビ、ハナ、クビ、ハナ、クビ…」の大接戦にもつれ込み、10着馬までわずか0.2秒差。小回り平坦コースのハンデ重賞らしい微差の勝負を切り抜けて勝ったのは、ベテラン8歳のダンスアジョイ(父ダンスインザダーク)だった。
重賞初制覇のダンスアジョイ(一族にはアスワン、最近ではモンテクリスエスなどのいる牝系の出身)は、3歳秋、もう未勝利戦が終了してからのデビュー。500万、1000万条件を3戦して勝てず、4歳時はホッカイドウ競馬に移籍して2勝。そのあと少しずつ少しずつ地道に力をつけ、今回が通算38戦目の重賞初勝利だった。
レース前半は最後方追走からインぴったりの追走。徐々に進出はしても無理にスパートせず4コーナー手前でひと息入れると、直線は馬群の隙を探すように伸び、最後は横に並んだ馬群の最内から強襲。もちろんこれには、小倉コースを知り尽くす角田騎手のここ一番で見せる絶妙の騎乗もあった。
しかし、大接戦を制したのはタフで少し地味なベテランホースのこれこそが真価なのだろう。いかにも夏のローカル重賞らしく、渋く、かつ小味の効いた結果だった。小差2着も7歳のホッコーパドゥシャ。驚いたことに9歳エリモハリアー(17番人気)も4コーナー最後方近くから大外に回りあと一歩。0.1秒差の5着に突っ込んでいた。ベテランだけがいつも以上に激走した気がする。
ほとんど勾配のない小回りの平坦コースの2000m。勝ちタイムはどの馬が乗り切っても不思議ない1分58秒3。レース全体の流れは「59.2-59.1秒」。もしこれが能力差のある小頭数のレースだったら、およそ入れ替わりのない単調なレースになっても驚けない。
でも今回のような能力接近のフルゲート18頭の混戦になると、スパートのタイミングひとつ、コース取りひとつでどんな結果が導き出されても納得せざるをえないのが、夏の小回りコースのハンデ重賞なのだろう。残念ながらレース中に心房細動を発症して失速のコスモプラチナと、絡まれて止まったドリームフライト以外、ほとんどの馬が1分59秒0以内。力及ばずというほどの大きな差はなかった。
2着ホッコーパドゥシャはいくらも負けていないが、七夕賞と同じでどうしても勝負どころの反応が鈍い。他馬にさっと前に入られたりする瞬時の切れのなさが弱みなのだろう。2000シリーズの得点を重ねたが、あと一歩で勝ち切れないタイプ。仮に新潟記念に出走するとしたら、またきっと上位で得点を獲得しながら、合計点数だけが光る残念賞に終わったりするのかもしれない。
牝馬クラウンプリンセス(リーチザクラウンの全姉)は、目下の充実ぶりをフルに示した非常に惜しい3着。一時は成長力に疑問も生じたこともあるから、この姉のパワーアップは、3歳リーチザクラウンにとって秋の心強い後押しになるだろう。
10番人気のエーティーボス(父ナリタトップロード)は、巧みに流れに乗り一瞬は抜け出してくるかとも見えた。上位に食い込んだ中ではもっとも若い5歳牡馬。あと少しだけタイムを要するような馬場で得意の平坦コースなら…だろう。そろそろローカル重賞なら手が届くところまできている。
人気の4歳馬ダイシンプラン(父タイキシャトル)は、理想はどこかで一気にスパートしたいタイプとあって、条件戦では2000mもOKだったが、OPでは1800mの方が向いている印象が残った。5歳ダイシングロウ(父ダンスインザダーク)は、小倉の2000mは合っているはずだが、もともとうまくツボにはまれば…の大駆けタイプ。正攻法に出た今回は逆にプラスアルファがなかった。