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トウケイキセキ5着

  • 2002年09月23日(月) 19時21分
 9月23日に盛岡競馬場で行われた「第17回ダービーグランプリ」。今年は武豊騎乗のゴールドアリュール(父サンデーサイレンス)が断然の人気となり、レースもそのまま人気通りの圧倒的な強さで優勝した。

 その陰で、私が密かに注目していたのは、地元のトウケイキセキ。この世代唯一のトウケイニセイ産駒として血統登録され、父と同じ盛岡の小西重征厩舎に入厩し、これまで12戦6勝2着1回3着2回の成績を収めている牡馬である。収得賞金は1146万円。前々走の不来方賞では11頭中10番人気ながら2着となり、一躍注目される存在となったという。前走の特別戦を順当に勝ち予想紙には「今季一番のデキ」などと書かれている。中央の有力馬を迎えて、文字通りの試金石となる一戦だと言えるだろう。

 話はいきなり3年前に戻る。春まだ早い頃だった。私宅に電話がかかってきて「トウケイニセイの種付証明書を発行していただけないでしょうか?」と電話の主が切り出した。名前を伺ったところ「平取の池田といいます」とのこと。聞けば前年にトウケイニセイを種付したのだが、受胎確認後の種付料の支払いをするべく準備をしていたにもかかわらず支払先がはっきり分からないのでそのままになっていたという。ちょうど前任者から私がトウケイニセイの事務局を引き継いだ前後のことで、確かにいささかゴタゴタしていたのも事実である。それで池田さんには種付料の徴収と引き換えに種付証明書を送付することを約束し、すぐ振り込んでいただくようお願いした。

 そうして無事にこの年唯一のトウケイニセイ産駒が登録されることになったわけである。これがトウケイキセキだ。

 この年の秋、盛岡の小西調教師がこの池田牧場に当歳だったトウケイキセキを見に行ったことがある。「とてもいい馬だったが、価格面でも折り合わずそのまま帰ってきた」と後日聞いたことがある。

 しかし、翌年秋、小西調教師は10月市場にこの馬が上場されることを知らされ、とにかく北海道へ足を運ぶことにした。地味な血統のこの馬は結局150万円で上場されたものの競り掛ける人もなく、そのままの価格で長谷川泰一氏が落札し、小西厩舎へ入厩することが決定した。

 それから約二年が経過し、とうとうダービーグランプリに出走するまで成長したのである。

 さて、肝心のレースは、果敢に先行したゴールドアリュールがそのまま行った行ったの逃げ切り勝ちだったが、トウケイキセキも中団よりやや後方からよく追い上げ、何とか掲示板に載ることができた。地方所属馬としては最先着だった。

 詳細な結果についてはどなたか現地で実際にレースを観戦された方に譲るとして、父馬のトウケイニセイについて少し触れたい。

 トウケイニセイは今年も元気に種付をこなしている。とはいうものの地方競馬出身の種牡馬は概して繁殖牝馬を集めるのがなかなか困難な時代になっており、何よりの宣伝はやはり産駒の活躍であることは言うまでもない。幸い、南関東ではドリームサラもいて、今回トウケイキセキが善戦し、共に今後の活躍がある程度は期待できそうなところにいる。

 そんな数少ない産駒から確実に走る馬が出現していることを、今後はいかにセールスして行くかが事務局の手腕でもあるのだが…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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