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ホッカイドウ競馬トレーディングセール

  • 2002年10月28日(月) 21時28分
 10月30日、今年度最後のトレーディングセールが門別競馬場にて開催される。28日現在で上場申し込みがあったのは計31頭。2歳20頭、3歳以上11頭という内訳である。性別では牡13頭、牝17頭(なぜか1頭?マークの馬がいる。去勢でもしたものか)と、牝馬が多い。前回(9月)に行われたセールは、11頭上場で3頭が売却されたにとどまり、今回の第2回目に期待がかかっているのはもちろんなのだが、それにしても、意外に上場頭数が揃わなかったことにこの現役馬セールの将来を危惧してしまうのは私だけだろうか。

 昨年はシーズン終了後の11月下旬という時期にこのセールを開催し40頭上場で11頭売却という数字に終った。その際「開催時期が遅すぎた」との反省が強くあり、今年度は当初の計画では6月より10月までの毎月(計5回)、現役馬セールを実施する方針を打ち立てたのだったが、結果的には6月から8月までは上場申し込みが僅かで中止を余儀なくされた。そして先月ようやく迎えた第1回目は前述した通りである。

 さて、今回の第2回目の名簿を一通り見てみると、例えば2歳馬20頭の中でもJRA認定競走の勝ち馬が僅か6頭しかいないことに気付く。その一方で、概ねどの馬も、デビュー以来の出走回数だけは多い。10戦、11戦という使い詰めの馬もいて、これが昨年までならば本賞金以外の出走手当だけでも結構な金額になったものと思われるが、今年からホッカイドウ競馬は2歳戦に限っては出走手当も廃止され、本賞金のみの交付となった。したがってまず認定競走で良績を残さなければ「馬主経済」はかなり苦しいものになるわけである。よけいなお世話と叱られるのを承知で一頭ずつ損得計算をしてみると、たぶん現在の段階で2歳馬に関しては「黒字」を計上している馬は皆無である。多い馬で272万円という獲得賞金だが、1歳秋からの育成費用や厩舎に支払った預託料(だいたい毎月20万円弱)を考えると、馬代金まで捻出できているとは言い難い。ここで首尾良く高値で売却できて、初めて馬代金が出るという程度のことだろう。

 それぞれの馬の関係者には、やはりそれなりの“事情”があることは分かる。しかし、大半の馬が現在の馬主も「持て余している」存在なのだろうということが透けて見える。現役馬の場合、1歳馬市場や2歳トレーニングセールなどと決定的に違うのは、「すでに競馬に出走して能力を試されている」ことである。すると、購買者の側に立ってみると、「これから先も好成績が期待できること」もっと言えば「大化けできるかも知れない馬」にこそ魅力を感じるものなのである。

 今年もおそらくはそんな馬が結構ホッカイドウ競馬にはいたのだろうと思う。しかし、「これは走る」との評価を得た馬は早々と庭先でトレードされたか、あるいは馬主が手離さずに他地区の地方競馬(例えば南関東など)に移籍したか、または認定勝ち馬ならば中央に移るということもある(アローキャリーのように)わけで、いずれにしても、実はそういう馬にこそ上場してきて欲しいと購買者は希望しているはずなのだ。

 「販売者」と「購買者」の思惑がなかなかうまくかみ合わないのは、私たちが生産馬を上場する1歳市場も同様かも知れない。要するに、お客がどんな馬を求めているのかを見極めなければ、この「トレーディングセール」の行く末も、あまり明るいものとは言えない。果たしてこの31頭の中に「大化けする」ような逸材がいるものかどうか…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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