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セレクトセール2011

  • 2011年07月13日(水) 18時00分
 すでに各報道などで周知の通り、7月11日(月)、12日(火)の両日にわたり苫小牧市、ノーザンホースパークを会場に開催されたセレクトセール2011は、初日の1歳と2日目の当歳ともに前年を大きく上回る好成績を収め、盛況のうちに幕を閉じた。

 以下、2日間の様子をお伝えする。

【初日・1歳市場】
 当日の比較展示がないので、多くの1歳馬は前日もしくは前々日に会場入りし、指定された馬房にて待機する。購買者はあらかじめ目当ての馬を馬房に見に行き、そこでチェックするのである。

 初日のせり開始は午前10時。上場頭数が多いことと、せり上げがリザーブ方式になっているため、売れても売れなくても販売申込者が設定した希望最低価格までは自らもせりに参加する。そのために1頭ずつのせり上げには時間がかかるのである。

 初日は上場予定馬240頭のうち7頭が欠場し、233頭が上場された。前半で話題をさらったのは、いうまでもなく51番「エアグルーヴの2010」(牝、父ディープインパクト)で、8000万円からスタートすると瞬く間に1億円を突破し、2億5000万円からは島川隆哉氏(トーセン)と多田信尊氏の一騎打ちとなった。

エアグルーヴの2010

 価格は3億6000万円まで上昇し、グローブエクワインマネージメントの多田信尊氏が落札。

 毎年のことだが落札価格と報道陣の数は見事に比例する。果たして今年も51番のせりが終了した直後には撮影場所にカメラマンが集合し黒山の人だかりとなった。

 報道陣に囲まれた多田信尊氏は「これだけの血統馬はまず市場に出てこないので、落札できて嬉しい。競走馬としてはもちろんのこと、引退後の繁殖牝馬としての価値も十分見込まれるので、いい買い物でした」と語った。

多田信尊氏

 いうまでもなく多田氏は代理人として同馬を落札したことになるが、現時点では「お二方(名前は明かさず)の共有になると思います」とコメントするのにとどめた。

 初日のもう1頭の“目玉”は122番「マイケイティーズの2010」(牡、父キングカメハメハ)の2億6000万円。言わずと知れたアドマイヤムーンの半弟である。前記エアグルーヴ産駒を落札できなかった島川氏がこの馬では意地を見せた。

マイケイティーズ2010

「高かったね。スタートが8000万円でしたからその倍くらいで何とか、と思ったんですが」と言いながら「(高額馬を落札したので)また家内に叱られるなぁ」とコメントし取り囲んだ取材陣を笑わせていた。

 初日は曇りがちながら涼しく、午後に降雨があったものの、過ごしやすい気温でせり終了は午後7時前。

 東日本大震災などの影響が懸念されていたが、終わってみれば同セール1歳市場では売却率、総売上げともに過去最高の数字をたたき出した。

【2日目・当歳市場】
 いよいよ当歳市場の日。午後に一時降雨があるかも知れないとの予報だったが、それとは裏腹に、時間の経過とともにすばらしい好天に恵まれた。

 午前8時より比較展示が始まった。展示の入れ替えはなく、全馬(当歳なので大半が母馬と一緒にきている)一斉に等間隔で並ぶ。毎年思うことだが、ここは木々の間に馬たちがたたずみ、ロケーションとしては申し分ない。多頭数のため、展示時間も午前10時のせり開始ぎりぎりまで設定されていた。

 当初、1歳市場はともかく、当歳は昨今の経済情勢から考えてやや苦戦するのではあるまいかと思われていたが、初日同様に開始直後から活発な取引が展開された。

 この日の最高価格馬は336番「ウインドインハーヘアの2011」(牡、父ネオユニヴァース)で、グローブエクワインマネージメントの多田信尊氏が2億5000万円で落札した。この他、1億円を超えた馬は419番「マジックストームの2011」(牡、父ディープインパクト)の1億3000万円、351番「カチバの2011」(牡、父ダイワメジャー)の1億円の3頭。前日と合わせて計5頭がミリオンホースとなった。

 2日目は220頭の上場で161頭が落札され、売却率は73.2%(前年比5.4ポイント増)。総額は11億820万円増の44億4720万円。実に2日間の合計では91億7320万円(いずれも税抜き)に達する大商いを記録した。

 2日間を振り返って吉田照哉氏は「いい馬が揃い、ここでしか手に入らない馬が多数上場されたことによりこの結果となりました」とコメントし「今年の結果は、購買者の方々の首に縄をつけて無理やり引っ張ってきたものでは決してなく、この市場で馬をお買い求めいただくことが定着してきたことによるものです。オーナーになり、ここで馬を買うこと自体に喜びを感じておられる方々が増えてきたものと受け止めております」と総括した。

吉田照哉氏

 震災による影響などどこ吹く風の好成績という他なく、購買登録者数もまた確実に増えていた点も見逃せない。改めて“社台ブランド”の威力をまざまざと見せ付けられた感がある。

 いよいよ来週は新ひだか町の北海道市場を会場に「セレクションセール」(HBA日高軽種馬農協主催)が2日間にわたり開催される予定である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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