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種牡馬展示会ピーク

  • 2003年02月24日(月) 12時07分
 2月17日の社台スタリオンに始まり、25日のイーストスタッド(浦河)まで、この時期生産地は種牡馬展示会が盛んに行われる。

 このところの不景気により、繁殖牝馬の種付け頭数はおそらく減少して行くことが予想されることから、どのスタリオンも必死の売り込み合戦を展開するのである。まず、種付け頭数の確保から仕事が始まる。いくら強い遺伝子を持った種牡馬でも、種付けをしないことには産駒が得られないわけで、とりわけ今年初年度の供用となる新種牡馬にとっては、何としてでも一定数の繁殖牝馬を獲得したいところだ。

 かっては、マナードという種牡馬が「新馬戦(もちろん中央競馬の)優勝馬第一号に現金100万円プレゼント」などと謳った広告を掲げたこともあった。また、南関東公営の東京ダービー優勝馬ミルコウジが新種牡馬として供用開始となった年に「生まれた産駒をすべて私が買い取ります」とこの馬のオーナーが宣言したことなども思い出す。

 また、ダイコウガルダン(これも公営で活躍した)の場合は、種付けしてくれた生産者に、宝くじをプレゼントする作戦を考案したりと、考え付くありとあらゆる方法が試みられてきたわけである。

 今や、「受胎条件での支払」は常識で、もっと進んで「出生後一ヶ月以内での支払」さえ、まったく珍しくなくなってきている。それとともに「フリーリターン特約」を採用する種牡馬も大半に及ぶ。フリーリターンとは、受胎確認後に種付け料を支払ったものの、その後不可抗力で流産したり、または出産時の事故などで産駒を得られなかった場合、翌年のその種牡馬を無料でもう一度種付けできるという制度。この制度も導入以来、一気に広まった。

 そして今年になって、ほとんど究極ともいうべき新方式が誕生した。「プロフィットプライス」と称するこの制度は、何と、種付け料の支払期限を産駒誕生後、1歳の12月31日までに“延長”できるというもの。オーナーブリーダーが自己生産馬を自ら競走に供用する場合や、庭先で生産馬を販売できた時などには、その時点で種付け料を振り込んで血統登録を行えば良く、売れるか売れないか判然としない生産馬に先行投資するリスクからは逃れられる。

 ただし、一方の種牡馬の側からすると、種付け料の回収が通常の場合よりも2年間遅くなるデメリットがあるわけで、本邦初の試みとしてこの方法が定着するかどうか成り行きに注目したいと思う。

 こうしてみると、生産者の負うリスクを軽減するための様々な方法が新たに採用されて、私たちにとっては無駄に資金を投下することなく生産ができるようになってはきているように思う。しかし、一部の人気種牡馬に関しては、相変わらずの「高値安定」で、しかも早々と「満口」となっている例が少なくない。

 まだまだ、全体的には高いと言われる種付け料。個人的には、せめて現在の相場の半値程度にでもならなければ、生産者が産駒販売の際の利益を確保できないのではないかという気がする。何度も書いたように思うが、生産原価に占める種付け料の割合は約40%にも達するのが日本の馬産だからである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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