「世界に通用する強い馬づくりを」
70年代に提唱され、この言葉を旗印にJRAはグレード制の導入、ジャパンCなどの国際レースの創設を行ってきた。賞金面の拡充もその一環だ。
馬産地では海外に新しい血を求めて社台グループ、軽種馬協会が中心になって新種牡馬を導入。社台スタリオンステーションは今や世界屈指の地位にまで成長した。かつてはレースと調教が混在していた競馬場も、東西トレセンの誕生で飛躍的に調教施設が充実。2冠馬ミホノブルボンを手がけた戸山調教師の「坂路革命」をきっかけに坂路調教というジャンルも確立。世界的にも類を見ないトレーニングに特化した施設となった。
今でも「馬づくり」に携わる人たちは「世界に通用する」を目標に日々研さんを積んでいる。
しかし、そこに冷や水を浴びせたと言えそうなのが「自ブロック優先制度」。下級条件だけだが、この秋から東西交流が制限されることになった。かつて、関西の3歳未勝利馬が東京に遠征した際のこと。「ウチが負けるとこれ見よがしに喜ぶし、勝ったら勝ったで『こんな条件までかっさらっていくんじゃねえよ』と、散々嫌みを言われた」という某調教師の話を思い出す。こうした“歓迎ぶり”が嫌で調教師席で観戦しないトレーナーもいるという。
松田博調教師は「昔はとにかく関東馬が強くて。それをどうやったら負かせるかだけを考えて調教してきた」と“東高西低”時代を振り返る。調教施設の違いを訴える美浦の関係者に対しても「世界的に見ても、これほど恵まれた施設はない。香港なんて、あんな(脆弱な)設備から世界に通用する馬がどんどん出てくるのだから。今あるものを工夫して運用するのが筋じゃないか」とくぎを刺す。
関西が弱かった時代を知る人だからこそ、決して恵まれた環境で開業したとは言えない人だからこそ、この言葉には説得力がある。
冒頭にいろいろ挙げたが「世界に通用する強い馬づくり」の最大の肝こそ東西の切磋琢磨。こうした制度の導入ではなく、人間の知恵で「打倒関西」を果たしてほしかったが…。
「いつもこういうことは関東発信で決まってしまう。時代に合った話とは思えないけど」と言うのは安田調教師。今週は17日の中山・カンナS(2歳オープン、芝外1200メートル)にジェネシスロックの出走を予定しているが、これは相手関係ではなく「短い距離がいい馬なので。関西に適当な番組がない」という理由から。今年はここまで、東西で2歳重賞を2勝ずつと五分の成績。例年よりも「高いレベル」の関東馬にジェネシスがどう挑むのか。孤軍奮闘を期待したい。
※本日は『トレセン発秘話』も更新されております。下部のバックナンバーからご覧ください。
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