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ひとつの時代の終焉!フリオーソ&ボンネビルレコードが引退

  • 2013年01月08日(火) 18時00分
 昨年末の29日、東京大賞典を最後にフリオーソとボンネビルレコードが引退しました。レース直後には、勝ったローマンレジェンドと岩田康誠騎手に対する声援や拍手と共に、ラストランを終え戻って来た2頭へも、惜しみない拍手が贈られました。

 長年ダート界を盛り上げてくれた2頭の名馬たち。ファンからの大声援を受け華々しく行われた共同引退式を含め、2頭のラストランをリポートします。

【フリオーソ】
パドックでのフリオーソ

パドックでのフリオーソ

主な勝ち鞍:‘06全日本2歳優駿、‘07ジャパンダートダービー、‘08&‘09ダイオライト記念、‘08&‘10帝王賞、‘10日本テレビ盃、‘11川崎記念、‘11かしわ記念

 5月のかしわ記念以来約7か月ぶりのレースだったフリオーソ。パドックに現れた姿は、全盛期と変わらない迫力に満ち満ちていました。休み明けということもあってか、いくらか気合いを表に出すそぶりを見せ、グイグイハミを取ってクビをしならせて歩いていました。栗色に輝くツヤツヤな皮膚で覆われた筋肉が1歩歩くごとに波打って、それはもうとても美しく、まさに王者の風格でした。

 レースは好スタートを決めて先頭。道中は落ち着いた流れになり、3コーナーでもまだ楽な手応え。4コーナーを回ってもまだ先頭。ここで一瞬夢を見たのは、私だけではないはずです。スタンドの大歓声に迎えられた直線、外から来たローマンレジェンドに交わされても粘る根性を見せてくれましたが、最後は失速して6着となりました。

 レース後検量前に戻って来たフリオーソは、久しぶりのレースを終え少し興奮気味の様子。クビを何度も上げ下げし、大きく息をして呼吸を整えていました。その体は、走ったことでさらに引き締まり、このまま引退してしまうのが惜しいほど。最後の最後まで見せ場を作ってくれたフリオーソに、涙する人たちの姿も見えました。

引退式でも王者の貫録を見せつけたフリオーソ

引退式でも王者の貫録を見せつけたフリオーソ

 レース後の戸崎圭太騎手は、目にいっぱいの涙を溜め、声を詰まらせながら語ってくれました。

「久しぶりでしたが、状態はすごく良かったです。今日は最初から逃げるつもりでした。フリオーソの良さが一番活きるレースは出来たかなと思います。…色んな想いが…こみ上げて来ますね。無事に帰って来てくれたし…、第二の人生も頑張って欲しいです。フリオーソに……、ありがとうございました! お疲れ様でしたと声を掛けたいです」

 最終レース後に行われた引退式では、ファンからも「ありがとう!」という感謝の言葉が飛び交いました。

川島正行調教師
「7年間、脚元の悪いところを自分なりに庇って我慢して、良く頑張ってくれました。スタッフにも、ご苦労様と言いたいですね。戸崎くんとは、レースの時に「こうやっていったら、ああやってみたら」と相談していた中で、2010年の帝王賞で思った通りのレースが出来て勝つことが出来て、涙の出る想いでした。たくさんのファンの方々にも応援していただきました。7年間、本当にありがとうございました」

 数々のダートグレードを制した中でも、2010年の帝王賞は強烈な印象が残っています。カネヒキリ、ヴァーミリアン、サクセスブロッケン、スマートファルコンといった超一線級の馬たちと戦って先頭でゴールした時の感動は、一生忘れません。

 この後は種牡馬入りが決まったということで、次は子供たちの活躍を楽しみに待ちたいです。フリオーソ、本当に本当にお疲れ様でした!

【ボンネビルレコード】
パドックでのボンちゃん

パドックでのボンちゃん

主な勝ち鞍:‘05黒潮盃、‘05東京記念、‘06サンタアニタトロフィー、‘06金盃、‘07帝王賞、‘08かしわ記念、‘08日本テレビ盃

 東京大賞典のパドックに現れたボンネビルレコードは、いつも通りの黒光りする毛づやでとても10歳馬には見えません。この日は珍しく、何度も何度も厩務員さんに甘えるようなしぐさを見せ、ラストランということを感じ取っている様子でした。

 レースは最後方から、インに潜り込んで少し押し上げます。道中は後方2番手を追走。3コーナーで的場文男騎手のムチが入ってギアチェンジ。伸びてはいても、前を捉えることが出来ず9着という成績でした。

的場文男騎手
「この馬との想い出は数多くあるけど、やっぱり帝王賞で勝った時にはやったなと思いました。本当に真面目で一生懸命な馬。疲れた時もあったと思うけど、いつもゴールまで一生懸命走ってくれました。とにかく瞬発力が凄かったですね。8年以上一生懸命走り続けてくれたので、お疲れ様と言いたいです」

 ボンネビルレコードと言えば、なんてったって的場文男騎手。その関係はボンちゃんがJRAに移籍してからも続き、地方と中央の規定によって騎乗出来ないこともありましたが、2009年のジャパンカップダートでは、的場騎手がワールドスーパージョッキーズシリーズへの出場権を勝ち取ってJRAに遠征し、コンビが実現したこともありました。

伊藤厩務員が的場さん仕様のジャンパー着用

伊藤厩務員が的場さん仕様のジャンパー着用

 ラストランを終え引退式に登場した時には、お馴染みの白メンコを着用。さらに厩務員さんが着ていたジャンパーは、JRA時代の担当厩務員である藤盛さんが、的場さんへの感謝を込めて関係者に配った特別な物なのです。ボンちゃんは、中央と地方、そして人と人との架け橋役も果たしてくれていたんですね。

庄子連兵調教師
「新馬戦でデビュー勝ちした時から、大きい所で勝負していける馬だと感じさせてくれました。これだけ長く活躍してくれて、本当にたくさんのファンの方に応援してもらいました。本当に忘れられない馬になってくれましたね」

塩田清オーナー
「たくさんのファンに応援していただき、本当にありがとうございました。庄子先生、的場騎手を始め関係者のみなさまにもとても感謝しています。この後は第二の人生として、大井競馬場で誘導馬を目指すことになりました。若駒たちのリード役として、また頑張って欲しいです」

 一際目を引く黒光りの体ですから、誘導馬姿はかなりカッコいいんじゃないでしょうか。競走馬から誘導馬への転身は、精神面でもなかなか難しいものがありますが、ボンちゃんならば乗り越えて立派な誘導馬になってくれることと思います。大井競馬場へ行く楽しみが、また1つ増えますね。

 2頭の名馬たちの引退はとても淋しいけれど…。東京大賞典を勝ったローマンレジェンドを始め、新たなスターたちがひしめき合っている現在のダート界。2013は、2頭の名馬に負けないくらい、長く愛されるスター誕生を期待しています!! [取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
次回のゲストは栗東の笹田和秀調教師。2011年の中山牝馬Sで厩舎に初重賞勝利をもたらしたレディアルバローザが、週末1/19(土)の京都牝馬Sに出走予定。その後は3月の中山牝馬Sで三連覇を狙います。同馬の強さと笹田厩舎の馬作りとは。常石勝義さんが徹底調査します。公開は1/15(火)18時、お楽しみに。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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