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天真爛漫なカッチーと共に、権利を獲ってオークスへ!

  • 2013年04月16日(火) 18時00分
 今年もクラシックが始まり、桜花賞・皐月賞ともに関東馬が制覇!! 9年ぶりのダブル制覇ということで、美浦の雰囲気はいつも以上に華やいだ空気を感じます。さて今週は、オークスに向けてフローラステークスに挑戦する、テンシンランマンの関係者にお話をお聞きしました!

伊藤伸一調教師と田中勝春騎手

伊藤伸一調教師と田中勝春騎手

まずはデビュー戦からコンビを組む、田中勝春ジョッキー。

赤見 :テンシンランマンという素敵な名前の女の子ですが、その名前の通り、天真爛漫な仔なんですか?

勝春「それが違うんだよ! デビュー戦からずっと乗せてもらってるけど、この馬はね、すごく真面目なの。それでスタートも上手でレースも一生懸命走るから、言うことないんだけどね。乗っててこっちが苦労するようなところも全くない、偉い馬なんだけどね…。唯一課題を挙げるとしたら、天真爛漫じゃないところ。真面目過ぎるっていうか、頑張り過ぎちゃうんだな。もう少しポワンとしていてくれると、もっと力を出せるようになると思うよ。そこは俺に似てくれればいいのに(笑)。

そういう心の部分も体つきも、無事に夏を越えたらさらに成長してくれるんじゃないかな。本格化するのは秋以降だと思ってる。でも、持っているポテンシャルは相当高いから、今の段階でも十分オークスを目指せる器だよ」

赤見 :一週前追い切りを終えた感触はいかがですか?

勝春「今回は少し間隔が開いたけど、順調に来ているね。デビュー前から走るとは思っていたけど、ここまで期待通りだよ。とにかく真面目だから、調教もしやすいしね。これであと1本やれば、態勢は整うんじゃないかな。初の2000mも問題ないし、どこまでやれるか楽しみだね」

続いては、管理する伊藤伸一調教師。

すごく真面目なテンシンランマンちゃん

すごく真面目なテンシンランマンちゃん

赤見 :さっき勝春さんに伺ったんですけど、かなり真面目な仔なんですね。

伊藤「そうそう。それがいいところでもあるんだけどね。この仔の書類が来て、テンシンランマンっていう馬名を見た時、パッと勝春の顔が浮かんだの。それでオーナーと相談して、天真爛漫な勝春に乗ってもらうことになって。このコンビで結果出せたら、絵になるなと思ってね」

赤見 :どんな経緯で預かることになったんですか?

伊藤「当歳の時に牧場に見に行って、オーナーサイドから何頭かピックアップしてもらったうちの1頭だったの。綺麗な馬だったし、バランスも良くてね。血統はあまり気にしてなかったんだけど、まぁ単純に言えば、まさに僕のタイプの女の子だった(笑)。

そこから何度か牧場に見に行ってて、当歳の時よりずいぶん立派に育っているなとは思ってたんだけど。新馬戦は490キロだったから。こんなに立派なお姉ちゃんになったか〜と、嬉しい驚きだったね」

赤見 :デビュー戦は狭い所を割って2着、2戦目は叩き合いを制して初勝利と、早い段階から素質の高さを見せてくれましたね。

伊藤「新馬の時はまだ体に余裕があったけど、それであれだけのレースをしてくれたでしょう。実際に使ってみて、相当能力高いなと思ったね。あの頃はまだ体に身が入ってなかったというか、見てくれは悪くないんだけど、中身が入ってないから見せかけの体だったんだよ。俗にいう、乗り味のいい馬ではなかった。ただ、普通のキャンターでは感じられないんだけど、速い所に行くと体がググッと沈んで走りが変わるの。だから、いいものは持っているけど、良くなるのは先だなと思ってた」
 
赤見 :アルテミスステークスは12着と残念でしたけど、自己条件に戻ったら、その後弥生賞を勝つカミノタサハラに食い下がって2着、さらに前走は初の中山で完勝でした!

伊藤「あれだけのレースを見せられるとねぇ。どうしても、次へ次へと行きたくなっちゃうもんだけど。体質的にまだシッカリしているわけじゃないから、とにかく馬を急かさないでじっくり構えようと、自分にブレーキを掛けて。目先のことより、この仔の成長を考えてローテーションを組まないとね。

それに、外傷を負ってしまって、傷腫れというかフレグモーネのような症状も出てしまったので。もともと桜花賞は考えてなくて、でもフラワーカップには使いたいというプランもあったけど。傷を治すことを優先して放牧に出したので、傷はかなり良くなったね」

赤見 :フローラステークスに向けた調整はいかがですか?

伊藤「美浦に帰って来た時、少し体が減っていたんだけど、一週間くらいでフックラして。気のいい馬なんで、そんなに強く攻めなくても仕上がってくれるので、一週前に坂路で追って、あと当週にやれば整うね。前走は中山で勝ってくれたけど、稽古の様子だと右回りと左回りで少しハミの取り方が違うみたいなんだ。もちろんどっちでも大丈夫なんだけど、左回りの方がよりスムーズだから、東京は合っている。ここで権利を獲って、オークスの舞台に上げたいね」

調教が終わると眠くなります…zzz

赤見 :洗い場で手入れをしている様子を見ていると、ジーっとしててすごく大人しいんですね。厩務員さんの姿が見えなくなると、「どこ行ったの?」って感じで前掻きする仕草が可愛いです。

伊藤「普段はジッとしているし、調教が終わると眠そうにしてる所も可愛いよね。これで馬場に入ると一生懸命になり過ぎちゃうから…。稽古でも本当に真面目な仔でねぇ。もうちょっと遊びがあるといいんだけど。レースに行くと、狭い所も怯まず割って入ったり、自分より体の大きな男馬と追い比べになっても食い下がる勝負根性があって。普段は大人しいけど、ここぞという時の芯の強さを持っているよね。

この仔の母親(ハナランマン)は美浦の萱野浩二厩舎にいたので、僕は直接関わってはいないんだけど。牧場で大きな火事が起きて、一緒にいたたくさんの仲間が死んでしまったんだよ…。火事になると、馬は恐怖でパニックになってしまって、扉を開けても逃げてくれないものだけど。その中でハナランマンは、馬房を蹴り破って自力で脱出したという話でね。相当強い精神力があるんじゃないかな。この仔も、お母さんのその強さを受け継いでいると思うよ。

競馬は目の前のレースもすごく大事だけど、僕は一頭の馬の後ろにある、ドラマもすごく大事にしたい。そこが競馬の醍醐味でもあるし、その馬に関わるたくさんの人たちの想いもあるから。テンシンランマンとカッチーのコンビで、ぜひ新しいドラマを作って欲しいね」[取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
伝統のGI、天皇賞・春。最有力候補として挑むゴールドシップ陣営に、常石勝義さんが潜入取材します。昨年はGIを3勝。今年緒戦の阪神大賞典も完勝で、ますます安定感の増した同馬。天皇賞・春に向け最高の仕上げにもっていくプロの仕事ぶりに迫ります。公開は4/23(火)18時、ご期待ください。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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