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天覧競馬のアノ名シーンなどなど、松永幹夫調教師と競馬談義!

  • 2013年05月07日(火) 18時00分
 NHKマイルカップ、またまたGIを関東馬にやられてしまいましたね〜。でも! (柴田)大知が勝った!! パチパチ おめでとう! とすぐにメールをしました。同期なんです。大知の苦しかった時のことを思うと、僕自身と重ねてしまい、僕ももらい泣きしてしまいましたよ

 畠山先生の初GIタイトル、200勝の区切り、こどもの日に子供たちの前で、という舞台は、大知のために用意されたようでしたね。いやいや大知自身が作った偉業です。すごい! この勝利は大知をもっと大きな騎手にしてくれるでしょうね。話題いっぱいです。

 私情をかなり入れ込んでしまいましたね。しかし、競馬って勝ち負けだけではなく、馬と人の生き様みたいなドラマがあるからおもしろいんだと再発見しました。

松永幹夫調教師

松永幹夫調教師

松永厩舎の看板

松永厩舎の看板

 さて、“ミッキースマイル”で知られる松永幹夫騎手。今は調教師として活躍されているので、ドラマチック話を盛り沢山でお届けします。

常石:幹夫先生は、騎手時代からちっとも変わっていませんね。

松永:おいおい、それって僕が成長してないってことですか(笑)?

常石:そんな失礼なこと(ぺこり)。僕の知るミッキースマイルが、今も健在と言うことです。先生がデビューして、翌年に(武)豊さんがデビューして、オグリキャップが活躍し始めたころ、女性の競馬ファンが一機に増えたんでしょう。ちょうど僕もそのころ騎手になりたいと思ったんです。デビューのころはどうでしたか?

松永:女の子がいっぱい競馬場に来てくれるようになって賑やかになりましたよ。僕なんかモテモテで(笑)!? 騎手というより馬が人気になってくれるのは嬉しかったです。競馬学校2期生で同期に横山典弘、熊沢重文騎手がいます。彼らは今も現役騎手で活躍しているので尊敬しますね。僕なんか早々と辞めちゃったから、あかんたれやね。

常石:すごい成績を残されていますよね。馬への当たりが柔らかいのに、そつのない乗り方はすごいなと思っていました。

松永:なぜか牝馬が多くて、重賞も全部牝馬でしたね。牡馬で勝ってないのが唯一心残りです。管理馬で頑張ります。

常石:牝馬の中でも印象に残っている馬はありますか?

松永:どの馬も大事だと思っていますが、落馬事故から復帰後に第1回秋華賞をファビラスラフインとのコンビで快勝し、その翌年桜花賞をキョウエイマーチで勝てたのは、自分にとって大きな転機になったと思う。牝馬限定レースで勝ててないのは、阪神ジュベナイルフィリーズだけかな。天皇賞・秋の天覧競馬で騎乗できたことが、幸せ者だと思っています。こんなチャンスは二度とないかなと思うくらいです。

天覧競馬の名シーン

天覧競馬の名シーン

常石:(戦後)競馬史上初めての天覧競馬で優勝し、あの時の幹夫先生は紳士でしたよね。

松永:今思えば、恥ずかしいですね。初めてのことだったのできちんと挨拶をしたかったんです。下馬はしてはいけなかったでしょう。馬にもぽんぽんと合図を送り屈頭というか、頭を下げるように合図を送ったように思う。馬って賢い動物なので心が相通じると思いましたね。

常石:来賓席で観覧されている天皇・皇后両陛下に向かって馬上からヘルメットを取り最敬礼された瞬間は今でも語り継がれていますよね。競馬の歴史に残るレースだったと思います。昨年、ミルコ・デムーロ騎手も勝った時に、外国の騎手が両陛下に敬意を表してくれたことも嬉しかったですね。日本の競馬がそれだけ国際化してきた証拠ですかね。

松永:そうだね。強くなって認められるようになってきたと思う。競馬を通して世界で交流ができるのも魅力です。うちの厩舎も頑張らないと。

常石:レッドディザイアは大活躍でしたね。

松永:開業3年目に活躍してくれ、すごくいい出会いでしたね。2009年1月4日京都競馬場でデビュー勝ちし、2月にエルフィンSに出走して直線一気にワイドサファイアをゴール手前で捕らえて差し切り勝ち。2戦2勝で桜花賞へ向かい、ブエナビスタに差し切られ2着。その後、優駿牝馬でもマッチレースになりながらも、またしてもブエナビスタに鼻差負けの2着。その後休養を挟んで秋華賞へ向かい、初のGI勝利。3歳牝馬だがジャパンカップに挑戦し、直線で先団によく食い込んでくれ、ウオッカ、オウケンブルースリに続く3着に。敗れたが、あの強い馬たちと対等に走ってくれ、強かったと思う。

厩舎を支えたレッドディザイア

厩舎を支えたレッドディザイア

その後、ウオッカと一緒にドバイへ出走。マクトゥームチャレンジラウンド3に出走し、直線で逃げ込みグロリアデカンペオンを首差で押さえ優勝。勢いに乗ってドバイワールドカップに出走したんですが、前走のような豪脚は使えず11着に敗れてしまいました。このときに優勝した馬がグロリアデカンペオン号です。競馬ってやってみないと分からないんですよね。前走では勝った馬にやられてしまったからね。悔しかったですがいい経験をしました。

その後アメリカにも遠征し、アーヴェイ号に差されて3着に敗れてしまったんですね。エリザベス女王杯に出走予定したんですが、鼻出血を発症し、残念ながら現役引退になってしまいました。よく頑張ってくれました。この馬がうちの厩舎を引っ張ってくれたと思っています。繁殖牝馬になり仔馬が生まれたそうなので、楽しみにしていますが、うちの厩舎に来てくれるかどうかは分かりません。

常石:新馬の状況はどうですか?

松永:レッドディザイアやサンダルフォン以来活躍できていないので、頑張らなくてはいけないと思っています。厩舎の皆にも申し訳ないでしょう。2歳は、ディープインパクトの仔2頭、アドマイヤムーン、キングカメハメハ、ゼンノロブロイなど、楽しみなこどもたちが入厩を予定しています。

常石:1400勝された騎手から調教師になられたきっかけはなんですか?今年も騎手から調教師になられた方へメッセージをお願いします。

松永:僕がお世話になった山本(正司)先生が引退されるのがきっかけのひとつでした。先生は騎手としても調教師としても立派な方でしたから、少しでも勉強したいと思いました。落馬で重症をしているので、少しでも若いうちに調教師になって、僕が乗せていただいたような馬を育てたいと思います。アドバイスなんて何もないですね。僕が教えて欲しいくらいです。よろしくお願いします。

常石:先生が今目標にしているレースはありますか? また、ファンの方にメッセージをお願いします。

松永:やっぱりダービーかな? 今度は牡馬で勝ちたいですよね。ドバイやアメリカにも参戦しましたが、ダービーに勝てば世界に通用するでしょう。ファンの方たちはパドックで熱心に馬を見て新聞などでよく研究しているでしょう。僕より詳しいんじゃないかな。テンションの高い馬や入れ込んでる馬は来ないとか言うけど、走るときもあるので馬の持つ魅力を発見して欲しいです。魅力のある馬がいっぱいいるでしょう。応援してください。

 幹夫先生といえば引退の日、メインレースの阪急杯をブルーショットガンで勝ち、最終レースもフィールドルージュで勝利し、JRA通算1400勝で区切りをつけるなんて格好良すぎますね。「競馬の神様に愛された男」といわれたそうです。“ミッキー”と呼ばれ、“ミッキー”の付く馬にも騎乗され話題になりました。ミッキーベル、ワンダフルミッキー、ミッキーダンス、マルサンミッキーです。

 中尾謙太郎先生の管理馬にも騎乗されていた時、馬を信頼して乗ればいいとよく教えていただいたので、騎手時代のイメージが大きく、そんなお話が多くなってしまい申し訳なかったです。厩舎の活躍を楽しみにしています。今日はお忙しい中ありがとうございました。常石勝義こと、つねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

◆次回予告
次回の「競馬の職人」は、赤見千尋さんが美浦からリポート。競馬界の旬な情報をお届けします。公開は5/14(火)18時です。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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