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『僕たちは命を馬に託しています』ジャンプの道を貫く白浜雄造騎手

  • 2013年06月18日(火) 18時00分
 ファンの皆さんが待ちに待った宝塚記念がやってきましたね。上半期の総決算GI競走に力が入りますよね。ファン投票ダントツ1番人気だったオルフェーヴル号が肺出血で回避。残念です。

オルフェーヴル川合助手

オルフェーヴル川合助手

陣営も驚くほどのオルフェの能力

陣営も驚くほどのオルフェの能力



 追いきりの前日水曜日(12日)オルフェーヴルに会いに厩舎へ行きました。川合助手や担当の森澤さんが人参を持っていっても身動きしませんでした。何事にも動じないといった表情のオルフェーヴルでした。レースが近いこともよく分かっていて自分の世界をしっかり持っているそうです。決められた餌は完食するから間食はしないんだそうです。ちょっと小食なのでお茶漬けするそうですよ。それなのにあれだけのパワーな走りは、天性のものなんでしょうね。

 川合助手にオルフェの強さの秘密をお聞きしました。

常石:調教の時併せ馬に乗っていますよね。どんな感じなんですか?

川合:2、3馬身先に走り、オルフェが追いかけてきたかと思うと一瞬に追い越される。その時、軽自動車に乗る僕の横をターボーエンジンを搭載し、グワッと追い越していくって感じかな。持って行かれそうになりますね。調教でも乗るんですが背中が沈んでから大きく伸びるんですね、だから1完歩が大きくなるんですよ。やっぱりすごいですよ騎手やってたころも含めこんな馬に出会ったことは無いですね。まだまだ力はありますね。

 今回の回避はとっても残念ですが、オルフェーヴルのことを思うとゆっくり休養し凱旋門賞への挑戦を楽しみにしたいと思います。

(オルフェーヴル・・・みんな待ってるからね!)

 川合助手ならではのお話もいっぱいお聞きしていますので、凱旋門賞に参戦する時にまたお知らせしたいと思います。

 さて、ここからは障害レースに注目し、ジャンプの魅力をファンのみなさんに伝えていきたいと思い、シリーズで紹介していきます。障害レースを愛していると言っても過言ではない、障害レース重賞最多の17勝をマークしている白浜騎手です。

障害レースで活躍する白浜雄造騎手(右)

障害レースで活躍する白浜雄造騎手(右)

常石:障害レースに騎乗する騎手が少なくなってきて、騎手がいないから中止するレースもありましたよね。

白浜:厳しくなってきましたね。怪我のリスクも大きいので仕方ないですかね。でも僕にとっては乗れる回数も多くなるしそれだけチャンスがあるので大事にしたいです。

常石:外国では障害レースが人気ありますよね。

白浜:そうそう。一般の方も参戦でき一緒にレースするんですよ。

常石:恐い感じはしないんでしょうか?

白浜:自然の中に作られているので馬場も悪いしゆったり走るので、そんなに恐い感じは無いんでしょうね。一般と言っても乗馬の世界なので、皆さん上手でしょう。日本は作られた環境で馬場がとっても良いので、スピード競馬になっていますね。イギリスのグランドナショナルという過酷なレースは別ですけどね。70kgを背負って7000mのレースなんですよ。日本馬では対応ができないでしょうね。田中剛調教師が騎手時代に騎乗されたことありましたね。

障害レースで恐いと思ったらダメでしょうね。怪我をしたり悩んだりしたこともあったときは恐かったかもしれないけど、今は楽しいと思って乗れるようになりました。

常石:デビュー2年目で障害の重賞を獲ったよね。僕の2年後輩だけど、「すごい乗れるな」と思っていました。重賞を勝つ割合が多いでしょう。ここ一番の勝負強さがある。何かコツはありますか? 楽しいと思って乗れるようになったきっかけはあるんですか?

白浜:たまたま運が良かっただけですよ。特には無いですが、自分で馬を作って勝った時は最高の達成感ですね。僕は、その一瞬のためにジョッキーをやっているような気がします。前向きに頑張れない時もあったりしますけどね(笑)。最初はまったく恐くなかったんですが、いろんなこを経験したり落馬のことを考え恐いと思ったら、もう動けないし乗れないですもんね。

障害レースは注目度も低いし、こんな危ない仕事をずっと続ける意味があるのかな? と思った時期もあったけど、恐さから抜け出すきっかけは特にあったわけではないですが、依頼してくれる馬主さんや調教師に「恐い」って言えないでしょう。緊張感に変えていますよ。レースが終わった後は、「あぁ、無事にかえってきたな」って安心し、テンションが高くなりますね。

常石:障害レース馬は自分で作るでしょう。特にこだわってることはありますか?

「障害は馬も騎手もセンスが大事」

「障害は馬も騎手もセンスが大事」

白浜:とりあえず馬を落ち着かせることから始めます。フラットの短距離を走っていた馬は、うるさい馬が多いんです。落ち着いて跳べるようになってきたら面白いですね。平地で活躍できなかった馬がジャンプを覚えると勝つチャンスが出てきます。チャンスのある馬に育て勝つ。だから恐くなくなっていったんでしょうね。馬も騎手もセンスは大事ですね。息が長く持つスタミナのある馬が好きです。3000m近く走るんですからね。

スタートしてからアクションを起こすのではなく、レースの流れを見ながら、馬が一番気持ち良く走るように持って行きたいと思って乗っていますが、上手くいかないときの方が多いかもしれないです(笑)。

常石:最後にファンの方へメッセージをお願いします。

白浜:「障害レースやってる!」と見てもらえたらいいですね。特別レースの前で7、8レースぐらいにやってくれたらいいな。生のライブで見てもらうのが一番だと思います。馬の質も上がってきているので、昔みたいに逃げ切りや強い馬が勝つケースが多かったけど、平地力もあるからレースがおもしろくなっていると思います。

僕たちは命を馬に託して人馬一体でチャレンジしています。ジャンプの醍醐味を味わってください。

常石:ジャンプレースは作られた馬に乗るのではなく、自分の乗る馬を自分で時間を掛けて作り上げていく醍醐味が、ファンの皆さんに伝って欲しいですね。

 平地では活躍できなかった馬がジャンプのセンスがあると再発見できるレースでもあるんですね。魅力が少しでも伝わるといいですね。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

◆次回予告
地方・浦和競馬の元騎手で、今年の調教師試験に合格した水野貴史調教師。現在開業に向けて、双子の兄である美浦の水野貴広調教師の元で修業中です。次回の「競馬の職人」は、水野調教師兄弟を赤見千尋さんが直撃。兄弟の知られざるドラマに迫ります。公開は6/25(火)18時、ご期待ください!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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