いよいよ夏競馬が始まりましたね。早々に活躍する新馬が大物感を匂わし、来年のダービーに向けての期待度も大きくなるのが、夏競馬の醍醐味ですよね。
西日本一の急な坂をものともせず力強く伸びてきたマジンプロスパーが、CBC賞をレコードタイムで連覇達成。すごい追い込みを見せてくれましたね。連覇はなんと35年ぶりだそうですよ。ユーイチ(福永騎手)が今年初の重賞勝ちなのも嬉しいです。
先週、土砂降りの栗東トレセンで、マジンに会ってきたんですよ。飼い葉を夢中で食べていたのでそっとのぞくだけでしたが…。食べている時に邪魔をすると怒るんですよ(どうも餌をとられると思うようです)。暑い時期でもしっかり食べ、少し汗をかくくらいの時期が絶好調だそうです。陣営の皆さんおめでとうございます(僕が現役のときにお世話になった中尾正調教師の息子さん)。
さて、夏場はジャンプレースも少なくなるのですが、この時期にこそ普段できない馬とのコンタクトをしっかりとってジャンプを教えているそうです。ジャンプレースを始めて15年という北沢伸也騎手に、障害レースの魅力をお聞きしました。
障害界のベテラン・北沢伸也騎手
常石:障害騎手になられたきっかけは、なんですか?
北沢:ん…っ、平地で乗る馬がだんだん少なくなっていって。でも、騎手を辞めるにはまだまだ早いなと。まだまだ乗りたかったですから。最初は、父に中山競馬場によく連れて行ってもらって、「やりたかったらやれ」と言われて乗馬を始めたんですが、とっても面白かったんです。それからですね。
それに、家族もいるでしょう。養うためですよ。男ですからね。しっかり働かないと嫁に怒られますからね(笑)。最年長は林さんで、次は僕ですが、まだまだ乗りますよ。働かないと生活できないですからね。
常石:奥さんは、とってもステキな方ですよね。僕も現役のときはよく声をかけていただきました。お子さんが生まれてちょうど1年。もうすぐお誕生日でしょう。おめでとうございます。
北沢:ありがとう。ちょっと遅かったから、おっさんですが、まだまだ頑張りますよ。
常石:勉強になったというか、難しい馬はいましたか?
北沢:跳びがヘタな馬はとっても勉強になりますね。上手い馬は誰が乗っても上手いけど、ヘタな馬はひとつひとつ時間と手間を掛けて教えていく。馬の持ってるセンスみたいなものがあるね。上手くなれっていってもなかなか上手くならないよ。中には何回も使っていくと覚える馬もいるけど、ごくまれですね。
常石:それだけ時間を掛けて自分で障害馬を作っていくでしょう。そのときの見極めのポイントなどありますか?
北沢:能力だけではなく、練習しているとなんとなく分かってくるかな? 気分よく跳ばせるようにしないと、いやなものはいやだからね。感覚で分かってきますね。いかにだましながらやるかですね。
常石:障害馬に魅力を感じていますよね。それに自分で作っているので安心感もあるでしょう。仕上げ方にも自信を持てると思うんですが、反面難しいと思うことはありますか?
トレセンで談笑する北沢騎手(左)
北沢:喜んで跳んでるとは思えないから、気分よく練習させてあげないといけないね。馬は一頭一頭性格も馬体も違うので、見極めるのが大事だと思うよ。止まってしまうと倍時間がかかるし、癖になっちゃうから、本来の走る楽しさを教えていく事が大事になってくるからね。ここが気を遣うところですね。
常石:思っていてもなかなか勝てないですよね。そこが難しいでしょう。
北沢:そうだよ。難しいよ。勝てないよ。良い競馬をしたやつがいると、反対に良くない競馬をすることになる。まずは障害レースを無事にまわってくること。そこから結果がついてくるといいね。障害レースは人数が少ないからチャンスも多いと思うよ。障害馬はいるけど、騎手がいないからね。
常石:あるコラムを読んだのですが、地方競馬が無くなっていくじゃないですか。そこで乗っていた地方の騎手が障害騎手になれるような方法をJRAが企画してはどうかと提案されていましたが、どう思いますか?
北沢:いいんじゃないの。ヨーロッパなんかでは、一般の人も一緒に障害レースを楽しんでいますからね。落馬のリスクが大きいので馬券がなかなか買えないと思うんですが、レースの面白さや醍醐味を楽しんで欲しいですね。ファンの中には、馬券が取りやすいといわれることも多い。今ある障害レースを魅力あるものにしていきたいですね。応援してくれるファンは、とっても熱心に応援してくれるので大事にしていきたいです。騎手は、平地でも障害でも同じ騎手ですからね。
常石:障害レースのとき、例えば京都の三段跳びの様子を正面から撮るなんてできないんでしょうか? トークショーも障害騎手を交えてすると面白いと思うんですが
北沢:カメラは難しいかもしれないけどトークショーは面白いでしょうね。関西の馬はほとんどが500万下か未勝利馬ですから、騎手も馬も勝つチャンスがあるというのは魅力でしょう。障害レースの騎手として頑張りたいです。
デンコウオクトパスで制した12年東京JS
常石:昨年は13勝を挙げ、JRA賞最多勝利障害騎手を受賞されました。おめでとうございます。2011年もチャンスがあったのに、1勝違いで残念でしたが、その悔しさがあって昨年に結び付けたんですね。
北沢:ありがとうございます。まさか獲れるとは思わなかったです。僕が1勝のとき小坂君がもう4勝もあげていて、「どれだけ勝やろ」と思っていましたよ。その上、怪我のアクシデントもあり、賞には縁が無いんだと思っていました。
馬のローテーションを見たときに、「チャンス有かな」と思うようになりました。勝って欲しい馬で確実に勝つことができ、障害レースにまだまだ魅力を感じて夢を持っています。トーワベガ号も平地未勝利で障害デビューで不安がいっぱいありましたがゆっくり休養できたおかげで 重賞勝利(2010年阪神スプリングJ)につなげてくれました。この馬とのおかげで、障害レースの面白さを発見することができました。
常石:長い時間ありがとうございました。今年の目標は障害レース100勝ですね!
北沢:僕の信条は納得してもらえる競馬をしたいです。厩舎関係者からもファンからも「任せる」といわれたら嬉しいです。オッサンですが(笑)、「障害なら北沢!」と言われるように馬を作って行きたいです。一人でも多くの方に障害レースって面白いなと思われるようなレースをしていきたいと思います。障害レースを応援してください。
大先輩なのでゆっくりお話しすることが少なかったですが、今回お話できて、北沢騎手の人間性の豊かさを知り、とっても嬉しかったです。趣味も多く、大きなバイクでツーリングにも出かけたリ、釣りも上手いんですよ。今はパパぶりも発揮しているそうです。
障害騎手のリレーはまだまだ続きます。楽しみにしてください。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]