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武豊から騎手候補生へ!プロの騎手になるということ

  • 2013年07月23日(火) 18時00分
 今日23日、栃木県那須塩原にある地方競馬教養センターにて、武豊騎手の座談会&木馬指導が行われました! 騎手デビューを目指して日々訓練に励んでいる騎手候補生たちは、一言も聞き逃すまいと真剣な眼差しを向けていました。地方と中央の垣根を越えた騎手指導に密着しました!!

武豊騎手の座談会&木馬指導

武豊騎手が座談会&木馬指導

武豊騎手の座談会&木馬指導

武豊騎手に質問する騎手候補生たち

座談会テーマ『プロ騎手としての心構え』

司会:減量については、苦労されたことはありますか?

武豊「デビュー当時は3キロ減で斤量50キロだったので、多少しましたね。20歳過ぎてからは体重が安定して、今では全然苦労してません。と言っても、常に気にしてるけど、辛いことはないという意味です。長くやってるので、何をどう食べれば何キロになるとか、何曜日の何時には何キロくらいだということは把握しています。毎日体重計に乗っているので、体重計に乗ってびっくりすることはないです。

 減量で一番大切なのは、自分の体の調整法を早く見つけることです。食べたいものは食べたいし、どこを我慢してどこを緩めるのか。毎日何度も同じ時間に体重を計ると、どういう時に体重が増えてるとか、どれくらい運動すればどのくらい減るかということがわかるようになるので。誘惑は多いのですからね(笑)。人から言われて制限しているようでは、長続きしないですね」

候補生:今とデビューした頃と、生活面で変わったことはありますか?

武豊「大きく変わりましたね(笑)。昔は独身寮に住んでましたし。僕はそんなにストイックな方ではないと思うけど、昔はよく栗東の芝コースを走ってました。けっこう走り込んでたんでね、それで足腰がかなり鍛えられたと思います。騎手は体重面もありますから、余分な筋肉をつけてもダメ。走ることはすごくいいですよ。

 気持ちの面では、実は全く変わってないんです。あの頃も、『いい騎手になりたい』『もっと上手くなりたい』って思ってましたけど、今でも同じです。もっと勝ちたいし、もっと上手くなりたいですね」

候補生:関係者の方々との人間関係は、どんな風にしていますか?

武豊「人間関係はすごく大切ですよ。嫌われるとチャンスもらえないですから。ゴマをするわけじゃないけど、誠実に向き合うことが大事。馬に乗っている時間は短いし、馬から下りてからいかにチャンスを掴むか。いかに可愛がってもらうかですよ。ただね、人が見てるからとかじゃなくて。一生懸命頑張っていれば、自然と見ててくれる人がいるから」

候補生:競馬で勝つ秘訣はなんですか?

武豊「それがあればいいんですけどね(笑)。未だに競馬は難しいと思いますよ。馬は人より正直で、速く走れる時は走れるし、走りたくない時は走れない。言葉が話せないし、そこをこちらが考えてあげないと。馬は1頭1頭個性があって、こちらにサインを送って来るから。そこを見逃さないようにしてあげないとですね。僕は特にメモとかはしてないですけど、乗ればわかりますよ。何年ぶりかに乗る馬でも、乗れば覚えてますね」

候補生:レース前に、どう気持ちを高めたらいいですか?

武豊騎手が一人一人に木馬指導

武豊騎手が一人一人に木馬指導

武豊騎手自ら木馬にまたがり

武豊騎手自ら木馬にまたがり

武豊「無理に高めることはないですよ。だって馬が高ぶってるから。乗る方は、いかに冷静でいられるか。レースの戦略を考えて、人間は落ち着いて乗る。自分の乗る馬がどんな気持ちなのか見てあげないと。それにね、馬に乗ると落ち着くんですよ。こうやって人前でしゃべったり、歌を歌ったりする方がよっぽど緊張します(笑)」

候補生:新人騎手として、気を付けることはありますか?

武豊「自分はプロの騎手だということを意識して行動することですね。毎年誰か何かやらかしちゃうんだけど、やっぱりプロとしての意識が足りないと思うんです。何かをする時、騎手として考えた方がいい。騎手として、これはやるべきなのか、やっていいのか、やってはいけないのか。そこを考えて行動すれば、大きな間違いにはならないと思いますよ。

 あとは、せっかく騎手になったんだから、一生懸命頑張って欲しい。最近の若い子は…っていう言い方もあれですけど、ちょっとガッツが足りないように感じるんです。もっと貪欲に、先輩たちに食らい付いて欲しいですね。だってせっかく騎手になったんだから。もったいないでしょう」

候補生:武騎手の、今後の目標は何ですか?

武豊「大きな目標は、さっきも言ったけどもっと上手くなることです。この間トルコに遠征に行ったんですけど、色々と刺激を受けて来ました。今年はキズナで凱旋門賞に乗れることが決まったんでね、ここに向けて今何が出来るのか、日々考えてますよ。騎乗にしても明確な答えがないので、他の人の騎乗を見て勉強したり、自分のレースのVTRを何度も見たりしてます。自分のミスで負けたレースは見たくないけど、それも勉強。次に生かさないと。勝ったレースは何度でも見たくなりますね(笑)」

 約一時間の座談会後には、来年4月のデビューを目指す、92期生を一人一人木馬指導。特に注意が多かったのは、下半身を強化することと、アブミの踏み方。一人一人丁寧に教わって、候補生は緊張しながらも大感激していました。最初はご自身は乗らないつもりだった武騎手、指導に熱が入り、最後はスリッパを脱いで、靴下の状態で木馬騎乗。良くない騎乗例と、自身の騎乗フォームを披露した時は、候補生の間から、『おお!』『すごい!』という感嘆の声が漏れました。

〜木馬指導を終えて〜

92期騎手候補生:水野翔(北海道所属予定)

92期騎手候補生:水野翔(北海道所属予定)

92期騎手候補生:鈴木麻優(岩手所属予定)

92期騎手候補生:鈴木麻優(岩手所属予定)

◆92期騎手候補生:水野翔(北海道所属予定)

「武騎手に色々とお話を伺って、本当に勉強になりました。今日が来るのを楽しみにしていたんですけど、木馬指導では緊張しちゃいました。武騎手に注意してもらったところをこれからの訓練で直していきたいと思います!そしていつか北海道でリーディングになって、それでJRAに移籍するのが夢です。難しいことはわかってますが、一生懸命頑張ります!!」

◆92期騎手候補生:鈴木麻優(岩手所属予定)

「実際にお会いした武騎手は、オーラがすごくてカッコ良かったです。この日のためにいつも以上に木馬の練習してたんですけど、緊張しすぎて上手く出来ませんでした。でもわかりやすいアドバイスをいただいたので、これから先の努力する方向性が見えました。わたしもいつか、武さんのようなオーラのある騎手になって、みんなに喜んで欲しいです!」

〜この日の座談会を終えて〜

武豊「僕も20何年前は同じように候補生だったんでね、みんなの気持ちはわかりますよ。僕の時には、安田富男さんや的場均さん、郷原洋行さんが来てくれて。色々話を聞かせてくれたこと、今でもよく覚えてます。

 JRAの生徒には1、2度こういう機会があったけど、地方の子たちは初めてだったし、呼んでもらって嬉しいです。細かい騎乗のことを話すよりも、プロとしての気持ちを話した方がいいのかなと思って、そういう話を中心にしました。

 僕自身も、すごく刺激を受けましたよ。目がキラキラしているし、頭はピカピカしているし(笑)。僕の子供であってもおかしくない年齢の子たちですから。今日のことが少しでも刺激になってくれたらと思います。

 この候補生の中から、スタージョッキーが生まれてくれたら嬉しいですね。いつか一緒にレースに乗りたいし、それでコテンパンにやっつけたいですね(笑)」[取材:赤見千尋/地方競馬教養センター]

武豊騎手「いつか一緒にレースに乗りたい」

武豊騎手「いつか一緒にレースに乗りたい」

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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