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ネオユニヴァースの調教も手掛けた、馬作りのプロ・西谷誠騎手

  • 2013年07月30日(火) 18時00分
 小倉競馬も始まりサマーシリーズ真盛りです。夏競馬ならではの楽しみ方があると思います。小旅行をかねてちょっと脚を延ばして、競馬観戦などはいかがですか? 競馬場の近くには美味しいものがいっぱいありますよ。

 前回このコーナーに登場していただいた高田騎手が、小倉サマージャンプ3連覇達成。全て違う馬でという偉業を成し遂げました。小倉競馬場のジャンプのコースが一番好きだと話してくれたのが納得です。

 勝利インタビューの中で「僕の記録より懸命に走った馬をほめてやってください。この後トークショーなどイベントがたくさんあるので楽しんで帰ってください」と相棒への労いとファンサービスも忘れない潤騎手。競馬の腕だけではなく、ファンの心をつかむのも上手いなー! 今年はお子さんも生まれ、充実した年になりそうですね。楽しみです。

 さて今週は、ジャンプ界になくてはならない人材のお一人、西谷誠騎手です。

常石:先輩は障害の競走馬を作るのがとっても上手いんですが、いつ頃から乗馬をしていたんですか?

ジャンプ界のエース西谷誠騎手

ジャンプ界のエース西谷誠騎手

西谷:小学校6年生頃からです。父が障害騎手でしたからね。父は上手かったですよ。なかなか父に歩み寄ることはできませんね。

 競馬学校の教官である平沢先生に乗馬の基本をきちんと教えていただきました。競馬学校の時、厩舎実習へ行く時に怪我をしてしまって参加できなかったので、その遅れを取り戻すために、平沢先生にマンツーマンでみっちり特訓を受けました。

 先生は、オリンピックに出るくらい乗馬の上手い先生でした。ちょうどモスクワオリンピックの時だったけど、オリンピックが中止になって残念だったんです。平沢先生からは学ぶところが山ほどあり、いろんな技術を身に付けさせていただきました。俺の中では一番の教官です。とっても感謝しています。

 所属の瀬戸口厩舎にはGI優勝馬のラインクラフトやネオユニヴァースなど良い馬が沢山いましたので、調教をさせてもらいました。オープン馬にも沢山乗せていただき、僕の乗鞍も増えましたね。瀬戸口先生の馬を見る目はすごいと思いました。入ってくる馬の血統もすごかったですね。

 今では当たり前になってきているけど、ちょっと前までは考えられなかったローテーション、桜花賞からオークスではなくNHKマイルCというのに、ラインクラフトは応えてくれましたね。新しいことへの挑戦も惜しまなかったです。調教も、坂路だけにこだわらず、馬に合わせたスタンスでメニューを組んでいましたね。

2009年、中山大障害を制覇

2009年、中山大障害を制覇

キングジョイは連覇達成

キングジョイは連覇達成

常石:僕も障害レースに乗るようになってから、西谷先輩の作る馬は安心して乗れました。西谷先輩のことを尊敬しています。馬を作る一番のこだわりは何ですか?

西谷:まずは馬に話かける。馬の背中でよくしゃべる。これは自分自身をリラックスさせることで、馬に緊張を伝えない。馬もリラックスさせることから始める。

 そして、馬をよく見る。エンジンの良い馬、脚の使い方やキャンターへ行ってからの動き、動きの悪い馬でも速いところへ行ってから最後の1ハロンでわかる。飛びが怪しい馬や、乗り味の良い馬でも走らなかったりするけど、そんな時は焦らずゆっくり馬の特徴をつかんでいく。調教を大事にする。特に障害馬を作る基本は、乗馬だと思う。軸がしっかりしていないと基本的には走らないと思う。最終目的は競馬に使うことだからね。

 調教師とオーナーの理解が必要ですね。僕自身はとっても恵まれていて、馬作りは任せてくれアドバイスもしてくれます。例えば考え方が柔らかい昆先生は全て任せてくれ、オーナーにも理解を求めてくれ、いろいろ相談にも乗ってくれます。今乗せていただいてるのは、僕と高田潤と(藤田)伸二先輩でしょうね。とってもありがたいです。

 いろんな馬を作る中で不安のある馬はレースでは走らせませんが、癖のある馬や危険性のある馬は自分が乗ります。人気のある馬や安心して乗れる馬を他の騎手に回します。でも、馬にも恵まれているのでいつも良い馬に乗せていただいているので、もっと勝たないといけないですよね。

 それにしても、つねさんに尊敬なんていわれたら恥ずかしいな。僕には尊敬する騎手は沢山いるんですよ。

 伸二先輩、横山典騎手、四位騎手は、いつの時も乗り方がずれないんですよね。基本がしっかりしていると思います。1頭1頭違うけど、馬の特徴をつかんで馬に負担をかけていない。騎乗スタイルが安定し格好がいいんですね。これは乗馬でも大事なことです。まずは格好から入りますね。

 (福永)ユーイチは、新しいことにどんどんチャレンジし「これでいい」ということは無い。競馬への意欲が強いし満足していないから、楽しみです。解説が上手いので質問しても的確に答えてくれるから頼もしい。

常石:基本はやっぱり乗馬ですか? 僕も今、障害者乗馬にチャレンジしているんですが、なかなか座りが悪くて…どうすればいいですか?

西谷:それを上手く説明してくれるのがユーイチなんだよ。ユーイチか(武)豊さんか四位さんに聞いたら一番いいよ。四位さんも乗馬が上手いからね。騎乗スタイルが一番カッコイイのは四位さんだと思うよ。馬は生き物だから、底知れない可能性を持っていて面白い。僕たちは意思疎通し、いかに馬を御するかで変わってくるんだと思う。

騎手仲間と談笑する西谷騎手(左)

騎手仲間と談笑する西谷騎手(左)

常石:JRA通算障害レースで100勝は、競馬史上21人目でしょう。3年連続でJRA賞最多勝利障害騎手や中山大障害も勝たれていますよね。凄い記録だと思います。これから障害レースの魅力をファンの方に伝えていくには、どうしたらいいと思いますか。

西谷:日本は馬券が絡んでくるから難しいよね。ヨーロッパで乗ったことがあるんですが、障害レース専用の競馬場で一般市民も参加でき、みんなでレースを楽しんでいます。騎馬民族なので根本的に違いはあるのですが、日本も競馬に理解を得られるようになってきたので 僕たちが頑張らんとあかんなと思いますね。

 例えば落馬をすると馬券の一部返還とか。落馬は皆さんに迷惑をかけることになるので、できるだけ安全にレースができるように障害騎手みんなで馬のことを話し合っています。みんな障害レースが好きで、乗れることが楽しいですね。僕も、今乗れることが嬉しいです。でも求められていることは、これだけの馬に乗ってるので、もっと勝たないといけないんでしょうね。頑張ります。応援してください。よろしくおねがいします。

常石:長い時間ありがとうございました。

 174cmと長身の西谷騎手。背が高くなりすぎて悩みもあったそうですが、とにかく馬が好き、乗るのが好き。みんなでレース談義をしている時の顔は、童顔になっていました。やっぱり、馬が好きなんですね。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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