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モエレエスポワール、札幌2歳Sを制覇

  • 2003年10月07日(火) 11時31分
 G1レースが翌日に組まれていたからなのか、今年の札幌2歳ステークスは異例の土曜日に行われた。

 勝ったのは、出走メンバー中、唯一のホッカイドウ競馬所属モエレエスポワール。果敢に先行し、そのまま有力馬を振り切り逃げ残った。

 父マジックマイルズ、母セントラルスキー(その母マルゼンスキー)という血統。馬主は中村和夫氏、堂山厩舎所属。生産は浦河・惣田英幸牧場。

 惣田さんは「いやあ、まさか勝てるとは本当に思っても見なかったから、まったく気楽に家で観戦していました。グリーンチャンネルです。それが、スタートしてすぐ先行したもので、ほーっ、見せ場を作ってくれるじゃないか、という程度にしか受け止めていなくて…」と苦笑いする。「そしたら、4コーナーを回ってからも中央の人気馬が外から襲い掛かって来たのに抜かせないものだから、えーっ、おいおい、これはどうしたことだ、と応援しているうちに勝ってしまって、本当に驚きました」と笑みを浮かべた。

 無欲の勝利だったのかもしれないが、この馬、キャリアは豊富だ。デビュー以来すでに5戦を消化し、前走のコスモス賞ではヤマニンシュクルの2着と健闘していた。距離はその時と同じ、1800M。しかも今回は不順な天候の影響で馬場も稍重、中央の有力どころが伸び切れずにいる中をまんまと逃げ切る展開にも恵まれた。

 このモエレエスポワールの母、セントラルスキーは惣田さんの牧場ですでに「7〜8頭は出産している」古株と言っていい。「最初は、ミルジョージやアルカングなどを交配していました。母馬が中村さんの所有なものですから。でも、なかなかいい形の産駒が出なくて。マジックマイルズを交配し始めて最初に生まれたのがこのモエレエスポワールです。結構かん症の強い馬でしたね。1歳の11月まで家にいました。それで直接、門別の堂山厩舎まで連れて行ったのを覚えています。」

 その後はずっとマジックマイルズを交配し続けており、今年1歳になる弟と、当歳の弟が揃っているという。牡ばかりのようだ。

 「それにしても、雌伏の時代が長くて、中央の重賞勝ちは15年ぶりです。昭和63年のマイネルフリッセ以来ですから。」

 どんな牧場であれ、毎年コンスタントに一定の競走成績を上げるのは至難の技だ。まして、生産頭数が10頭以下の小規模牧場ならばなおのことである。

 さて2年ぶりとなるホッカイドウ競馬所属馬の中央重賞制覇。ヤマノブリザードが2001年のこのレースを勝ち、中央移籍(美浦・藤沢厩舎)となったのは記憶に新しい。その後も勝つまでには至らないが、度々重賞で入着を果たしている。

 このモエレエスポワールも、今後の「進路」が大きな関心を呼ぶことになるだろう。道営ホッカイドウ競馬は、今月末で開催が終了し、シーズンオフに入る。そのまま堂山厩舎に在籍し続ける道もないではないが、やはりヤマノブリザード路線を踏襲することになるのではないか。

 早期から仕上げる手腕。層の厚さ。ホッカイドウ競馬デビューの2歳馬レベルの高さは、すでに実証済みだが、今回もまた一頭の新たなヒーローを生み出したと言っていい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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