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オータムセール開幕

  • 2003年10月21日(火) 18時37分
 今年最後となる恒例の10月市場が始まった。20日より24日までの全5日間で上場を予定されているのは1269頭。初日の当歳(219頭)を除いた1050頭が1歳馬。ほとんどがサラブレッドである。(アア1歳は61頭)

 厳しい数字になるだろう、と思う。昨年の10月市場は、名簿搭載数でサラ1歳が1017、アアが74となっていたが、実際に上場されたのはサラ1歳769、アア56と、ほぼ4分の1が欠場した。

 この上場率の低さには、かねてより批判がある。「目当ての馬が出ていない」との指摘をする購買者が少なくないのである。この場合の“目当ての馬”は、たぶん良血の牡馬を指すことがほとんどだろう。事前に売れてしまって、市場当日に欠場となるケースである。

 確かに、その批判は正当だ。まさしく仰せの通り、一言の弁解もできません、というところだが、一方の生産者としては、さすがにこの時期になると、庭先の顧客を無下に断れない事情もある。「せっかく買いに来ているのに、市場に出すから売れない、とはとても言えない」と考える人がほとんどなのではないか。

 その裏には、生産者の側から言うと、果して市場に出して売れるかどうか、との不安感を払拭できない心理もある。何せ、売却率がざっと4頭に1頭程度なのだ。いかに良血とはいえ、自信満々で市場に臨む生産者など、今はほとんどいまい。

 さて、詳しい結果は次回に譲るとして、ざっと名簿を見渡した限りでは、まず上場馬の父が、例年のことながらかなり偏っていることに気付く。産駒頭数が種牡馬によってもともと異なるため、単純に比較するのは多少乱暴だとはいえ、この時期に、どれだけの「売れ残り」がいるか、という指標にはなるかも知れない。

 目に付いたところでは、エアダブリン23頭、エイシンサンディ20頭、エブロス14頭、オペラハウス14頭、キンググローリアス15頭、キングヘイロー13頭、グラスワンダー13頭、クロコルージュ11頭、ジェニュイン23頭、シャンハイ27頭、タバスコキャット12頭、チーフベアハート15頭、デュラブ17頭、ニホンピロウイナー11頭、バブルガムフェロー17頭、ピルサドスキー10頭、ブロッコ10頭、マイネルラヴ12頭、メイセイオペラ12頭、メジロブライト14頭、メジロマックイーン17頭、ヤマニンゼファー21頭、ロイヤルタッチ24頭、ロドリゴデトリアーノ15頭。ざっと見たところ、二桁の上場馬のいる種牡馬はこれだけいる。

 民間のシンジケート所有から日本軽種馬協会所有の種牡馬まで、実に多彩なものだが、果してこのうち、どれだけの産駒がこの市場で売れるものか。少なくとも、地方競馬の凋落と、長引く不況のあおりを受けて、買い控えムードが漂っているのは否定できない。

 先ごろ、早くも来春の種付け申し込みのための書類が、日本軽種馬協会から届いた。種付けするためにはまず「権利」を取得するところから始まるのが協会の方式である。フォーティナイナーなどを筆頭に毎年人気は高いのだが、頭の痛いのは種付けの前に種付け料を前納しなければならないことだ。

 先にリストアップした二桁の産駒が上場予定になっている種牡馬の中にも、この日本軽種馬協会所有の種牡馬が7頭もいる。オペラハウス、キンググローリアス、タバスコキャット、チーフベアハート、ピルサドスキー、ロドリゴデトリアーノ等々である。配合検査なる過程を経て、権利を取得したまでは良いが、これだけ売れ残ってしまっていては、生産者のみならず日本軽種馬協会にしても頭の痛いところだろう。

 市場の結果については次回に触れる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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