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ジョッキーから広報マンへ! みのたんの華麗なる転身

  • 2014年09月09日(火) 18時00分
そのたんとみのたん

そのたんとみのたん



「馬とか、騎手とか、競馬の主役はそこでしょう」

 兵庫県競馬で、34年という長きに渡って活躍していた三野孝徳騎手。昨年、騎手を引退すると、これまでには前例のなかった、「広報」に転身しました。騎手という職業を愛し、日々兵庫競馬を宣伝する毎日。その熱い想いをお聞きしました!

赤見:騎手を引退して、広報に…という選択肢は、全国でも初めてですよね。

三野:そうですね。前例がないことですから、NARや兵庫県競馬の公正部などと話し合いながら進めて行きました。今の立場は、騎手会から業務委託を受けている形です。

赤見:なぜ、広報になろうと思ったんですか?

三野:それはやっぱり、売上がどんどん減っているからですよ。現役時代は騎手会の会長を長いことさせてもらってたんですけど、その頃からこのままじゃいけないと色々考えてました。実際に実現した企画もあって、例えば騎手ズボンの広告は、うちだけじゃなくて他の競馬場にも広がりましたから。

赤見:騎手ズボン広告は、だいぶ浸透して来ましたね。

三野:あれも最初は大変でしたよ。とにかく前例がないですからね。NARに行ったり、農水省に行ったり。広告を出すスポンサーの方も、1軒1軒回ってお願いしました。騎手ズボン広告は、その広告収入で騎手の福利厚生に役立てたり、ファンサービスに使ったりしていて、騎手会としては本当に役立っていますね。

騎手ズボン広告

三野孝徳さんが実現させた企画のうちの1つ、騎手ズボンの広告



赤見:SNSでの情報提供も、現役の時代から熱心にされてましたよね。

三野:ファンの方へちょっとでも多く情報を伝えたいという想いで始めたんですけど、ものすごく反応が良くてね。嬉しかったですね。現役の騎手が発信すれば、こんなにもたくさんの人が見てくれるということがわかりました。記者さんではわからないような細かい情報だったり、深い情報だったり。そういう、自分にしか出せない情報を発信するのが本当に楽しかったですね。でも、現役だとどうしても制約があるじゃないですか。調整ルームに入ったらネットは出来ないし、馬券に繋がる様なことも言えないですから。それで、本格的に広報の仕事がしたいと考えて、騎手を辞めたんです。

赤見:え!?広報に専念するために辞めたんですか?未練はなかったんですか?

三野:もちろん、年齢的なこともあって、昔よりも乗れなくなっていたというのもありますよ。でも一番の理由は、広報が面白くなったってことですね。自分は騎手という仕事が好きで、34年も乗って来たんです。競馬が好きとか、競馬場が好きっていうよりも、とにかく騎手が好きなんですよ。だから、騎手をもっと宣伝したい!もっと前に出したい!っていう考えなので、今までとは形は違うんですけど、根本は一緒なんです。

三野孝徳さんの現役時代

現役時代はNARで1936勝を挙げた三野孝徳さん



赤見:広報になって、難しいなと感じることもあるんじゃないですか?

三野:やっぱりね、仕方のないことですけど、競馬の運営はお役所じゃないですか。だから、ルールというのがとても大切なんですよね。「前例がない」の一言で、簡単に終わってしまう。その辺りをもう少し柔軟に考えてもらえれば…。まだまだ、地方競馬は広報出来る部分がたくさんあるんです。もっと宣伝すれば、掘り起こせる畑はいくらでもある。今、僕は異業種交流会に行ったりして、毎週100人くらいと名刺交換しているんですけどね、その中で7割以上は競馬をしたことがない人なんです。「競馬をやったことがある人」と質問すると、ほとんどいないんですよ。でも、「武豊を知ってる人」と聞くと、みんな知ってる。だから、まずはそこから話をしなくちゃならないんです。園田だとか地方競馬だとか、そういう話の前に、競馬を知ってもらわないと。僕ら競馬で生きて来た人間は、「競馬くらいみんな知ってるだろ」って思っちゃうけど、実際の社会は違うんですよ。そういう人たちにも少しずつ競馬を知ってもらえたら、まだまだファンは増えると思うんですよね。

赤見:三野さんをそこまで動かす、その原動力はなんですか?

三野:なんとかしたい! それだけですね。今の競馬は、やっぱり寂しいですよ。お客さんも少ないし、賞金も少ないし。僕はいい時代を知ってますからね。1周目のホームストレッチで、お客さんの「うぉー!」っていう声援で引っ掛かってしまう、っていう体験を若い子らにもさせてあげたい。さっきも言いましたけど、僕はとにかく騎手という職業が好きなんですよ。今ね、芸能人とかキャラクターとかを呼んで、盛り上げようとしているのはわかるんですけど、それはやっぱりその時だけの盛り上がりしかないんですよね。馬とか、騎手とか、競馬の主役はそこでしょう。馬や騎手を好きになってもらえたら、その時だけじゃなくて長く応援してもらえるんです。だからもっともっと、騎手を前に出していきたいですね。

三野孝徳さんの現役時代

騎手を前に出していきたい、と語る三野孝徳さん(写真は現役時代のもの)



赤見:今後考えていることはありますか?

三野:兵庫の騎手とか地方の騎手とかの括りではなく、JRAも含めて全国の騎手で何か出来ないかなと考えていますね。例えばゴルフコンペをやって、ファンの方を招待するとか。全国の騎手と連携して、いろいろやって行きたいです。9月16日(火)には、大阪で岩田康誠騎手の特別講演会をするんですよ。『現役アスリートから学ぶ「夢の実現と目標達成」の方法』と題していて、競馬の括りではないので、かなり色んな方面から反応がありますね。

赤見:では、今後の目標を教えて下さい。

三野:今は「前例がない」で止まってしまうことがどうしても多いんです。だから、「三野が言うなら仕方ない」と言ってもらえるように、実績を作りたいですね。僕の考えは夢物語なのかもしれないですけど、立ち止まるのはイヤなので。出来ることは精一杯やって行きたいですね。ファンの方々には、ぜひお友達を連れて、競馬場に遊びに来て欲しいです!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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