ダービー週に10着デビュー馬がダービー馬を追いつめる/トレセン発秘話
◆末永助手「2歳の一番大事な時に半年休んでいるんだから、その分の上積みがまだまだあるはず」
追加登録でのクラシックVといえば記憶に新しいのは昨年のオークスを制したメイショウマンボ。桜花賞で10着に敗れたその夜、武幸から電話で直訴され、松本好雄オーナーは追加登録料200万円を払っての参戦を決めたのだとか。
普通はそれぞれ性別に合わせたクラシック全てに登録するものなのだが、中には血統背景などを考慮して桜花賞のクラシック登録はしてもオークスはしないとか、逆に成長度合いなどを考慮して皐月賞はパスしてダービー、菊花賞に登録するといったレアパターンがある(レーヴデトワールのように牡牝全クラシックに登録する馬もいる)。
菊花賞での追加登録Vといえば2002年のヒシミラクルが有名だが、今年のメンバーでただ一頭追加登録してきたのがトーホウジャッカルだ。この馬の場合、デビューしたのがダービー週というのだから、クラシック登録を一切していないのはある意味当然だろう。
「2歳時に腸炎になって生死をさまよった馬。その時、体重も50キロぐらい減ってしまったし、無事にデビューできただけでもすごいことなんだ。それがダービーの週にデビューして、秋にはもうダービー馬と勝った負けたのレースをしているんだから、大したものだと思うよ」とは末永助手。
神戸新聞杯では勝負どころでゴチャつき、直線では前のサウンズオブアースがフラフラしたことで何度も進路の切り替えを余儀なくされた。そのうえでのタイム差なしの3着なのだからフロックでは片付けられない、中身を十分に伴ったレース内容だった。
「2歳の一番大事な時に半年休んでいるんだから、その分の上積みがまだまだあるはず。ここ数戦は直線の坂、小回り、道悪馬場…いろんなことを経験しながら結果を残してきている。淀の2度の坂の下りも、3000メートルの距離もこなしてくれるんじゃないかな」(同)
ジャッカルの狩りは獲物が疲れ果てるまでどこまでも追い続けるのだとか。ダービー馬ワンアンドオンリーを追い詰めるのは、このトーホウジャッカルかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)